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第11話

 一通り、ホテルの支配人の長広舌が終わりかけた頃、松江は改めて尋ねた。

「明日の朝、ガレットを食べることは出来ますか。

 母の久子から、本場のガレットは、本当に違う美味しさがある、と言われました」


「勿論、食べられます、当ホテルの朝食で、最大のお勧めはガレットです。

 唯、もう少し後の時期に来て欲しかった。9月から10月が、蕎麦の収穫期なのです。

 その頃のガレットは、本当に絶品ですよ」

 支配人は、そう言った。


 そして、支配人の下を辞去し、個室に入った後、松江は改めて家族に対する想いを巡らせた。


 実父の洋六や養父の仁の話に因れば、洋六と久子が結婚した直後に、正式に藤子は洋六と久子の下に引き取られたらしい。

 そして、仁が藤子を可愛い妹として溺愛したことが、久子の癇に触ったらしい。

 それこそ姑が、息子が嫁を可愛がり過ぎるように見えたのでは、と洋六や仁は言っている。


 そんなことから、小学校に上がる頃の藤子に、久子は出生の秘密(自分が継母で、実母は亡くなっていること)を告げたのだ。

 それを知って、泣いている藤子に、仁が自分も洋六を継父にしていることを告げたことから。

 藤子は洋六を兄ではなく、将来の結婚相手のように見ることになり、仁もそれを受け入れた。


 正に久子にとっては、完全に逆効果になってしまったのだ。


 そして、カテリーナ・メンデスさんが横須賀に住むようになり、仁はカテリーナに慕情を抱くようになり、藤子と仁を別れさせたい久子がそれを煽ったことが、更なる事態を招いた。


 藤子は洋六に対し、カテリーナに会って、仁と別れるように言ってほしい、と頼むことになり。

 それをきっかけに、今度は洋六とカテリーナが、何時か忍び合って会う仲になったのだ。

 尚、忍び合って会っていたとはいえ、実際の(肉体)関係は、二人には無かったらしいが。


 ともかく久子にしてみれば、藤子が要らぬことをしたばかりに、夫の浮気騒動が起きたのだ。

 そんなこともあって、欧州に向かった洋六やカテリーナを、久子が追いかける際に、藤子に自分の産んだ子ども達、藤子からすれば異母弟妹の世話を、久子は押し付けることになったのだ。


 久子にしてみれば、藤子が要らぬことをしたから、こんなことになったのだ。

 いわゆる責任を取れ、という想いもあってしたらしいが、藤子にしてみれば、完全に濡れ衣である。

 そもそも仁とカテリーナの仲を煽ったのは、久子ではないか、と藤子は考えたのだ。


 だが、そうは言っても、小林家の協力もあって、藤子は異母弟妹の面倒をよく看たのだ。

 だからこそ、私は藤子姉さんを母にすることになったし、早苗や正といった姉、兄も、母の久子ではなく、藤子を米内家の家刀自、女主人として今では見なす有様になっている。


 更に言えば、先年、米内家の戸主、私からすれば実祖父、洋六の実父が亡くなったことから、米内家の戸主は、正式に仁父さんが相続したのだ。

(仁の実父の正一が、米内家の長男であり、洋六はその弟だった為、仁が米内家を継ぐことになる)

 だから、家制度からしても、藤子母さんは米内家の家刀自、女主人になった。


 とはいえ、これでは洋六父さんが、いわゆる厄介叔父のように見えるので、仁父さんが家督相続した直後、洋六父さんは分家してしまった。

 幸か不幸か、洋六父さんには実子の正がいるし、仁父さんには言うまでもなく洋一という実子がいる。


 だから、それぞれの米内家の将来の家督相続には、当面は問題が無く、落ち着くところに落ち着いて、又、久子母さんと藤子母さんの関係も、やっと適度に縁が切れて落ち着いたのだけど。


 松江は、これまでの長い家族間の確執を振り返り、本当に落ち着くまでに長く掛かったものと想い考えた。

 これが横溝正史の小説ならば、厄介叔父が芸妓遊びをして産ませた娘が、本家の跡取り息子を誑かして、本家を乗っ取った末に事件が、という話になるような気が。


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 家族関係が親子であり伯父甥(伯母姪)でもある彼ら彼女たち、そこへ末娘であり末妹が嫡男長女の養子にスライドする事で二重三重の入れ子構造になってる米内家(^皿^;)後書きで山家先生自身がセルフツッコミし…
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