表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/91

第70話「先輩の背中」

砕け散ったブレスレットを、ケイは一瞥した。

床に散らばる欠片は、もう何の光も帯びていない。

ケイは銃を軽く回し、淡々と言う。


「そのブレスレットが壊れた以上――もう人形は再生しない」


その言葉に、遊佐カオリの瞳が大きく揺れた。


「……っ」


初めて、はっきりとした動揺が表情に浮かぶ。

視線が、ケイから――その隣へ。

金のポニーテール。

静かに佇む、蒼い瞳の女。


「……茜坂……夫婦……」


声が、震えた。

エクリプス内部で何度も共有された名前。

最優先警戒対象。


「そんな……なんで……このタイミングで……」


シルファは、微笑まなかった。

ただ、氷のように冷たい声で言う。


「……遊佐カオリ」


一歩、前へ。


「あなたは罪のない人を殺しすぎました」


蒼い瞳が、細くなる。


「その命で償ってもらいます」


ケイは一歩前に出て、背後の二人に声を投げた。


「カイト、ユウヒ」


振り返らずに言う。


「ここから先は――俺とシルファがやる」


カイトが目を見開き、すぐに苦笑した。


「正直、助かった」


ユウヒも息を整えながら、苦笑交じりに言う。


「いや~……これはもう、出番ないやつだね。

ていうか、これ以上いたら邪魔になりそう」


ケイは肩越しに、わずかに笑う。


「よく持ちこたえた。

ジャスティスの名に、恥じない戦いだったぜ」


その言葉に、ユウヒはほっとする。


「……先輩にそう言われると、報われるなぁ」


カイトは煙草を咥え直し、静かに言った。


「……後は、見学だな」


その瞬間。

ガシャン、と音を立てて――

再生し停止していた人形たちが、再び動き出した。


「まだ……この数なら私が有利」


カオリの言葉にケイは、動じない。

銃を構える。


「数がどうした。

全部壊せばいい話だ」


次の瞬間。

ケイの銃口が、紅蓮に燃え上がった。


「――フレアバレット」


引き金。

放たれた弾丸は、一直線ではなかった。

空中で弾け、炎の散弾となって降り注ぐ。

爆炎。

一体、二体――

人形が内部から焼き切られ、崩れ落ちる。

同時に。

シルファが異能のナイフであるアズールナイフを両手に生み出し一歩前へ。

静かに腕を振る。


「――ブルーバード」


蒼い斬撃が、鳥のように空を裂いた。

音もなく飛翔し、複数の人形を一息に切断。

切られた瞬間、

遅れて崩れる――それほどまでに鋭い。


「シルファ!俺が奴らの動きを止める!」


ケイは自信に満ちた表情でシルファに言う。


「はい!!任せて下さい!!」


シルファが返事をした瞬間。

ケイが撃つ。

炎で人形の動きを制限。

シルファの斬撃が、その“止まった瞬間”を正確に穿つ。


炎と蒼。

破壊と断絶。

完璧な連携。


「……は、はは……」


カイトが乾いた笑いを漏らす。


「あの数を一瞬で……

レベルが違いすぎるだろ……」


ユウヒも呆然と呟いた。


「……これが、最強……」


ケイが、前を見据えたまま言う。


「力ってのはな――

“守る覚悟”と“終わらせる覚悟”が揃って、初めて完成する」


シルファが、淡々と続ける。


「迷いがある刃は、鈍ります。

だから私は――迷いません」


最後の人形が、崩れ落ちた。

静寂。

瓦礫の中に、遊佐カオリだけが立っている。

震えながら。


「……来ないで……」


ケイが、ゆっくりと近づく。

その目は、怒りも憎しみもない。

ただ、終わりを告げる目。


「……聞け」


カオリが顔を上げる。


「トワなら――もういない」


「……え?」


「俺が殺した」


淡々と、事実を告げる。


「だから、もう従う必要はない」


銃を下ろし、静かに言った。


「……安らかに眠れ」


カオリの瞳から、力が抜ける。


「……そう……なんだ……」


次の瞬間。

風を切る音。

――シルファの刃が、閃いた。


「……さようなら」


蒼い一閃。

首が落ち、音もなく転がる。

完全な終幕。

シルファは刃を消し、振り返る。


「……ケイ」


「終わったな」


「はい」


わずかに微笑む。


「ジャスティスの前に立つ敵は――

私が、全部斬ります」


ケイは肩をすくめる。


「頼もしいな」


カイトは、倒れ伏す瓦礫と、二人の背中を見つめていた。

しばらくして、煙草を指で弾き、静かに言う。


「……なあ、ユウヒ」


「ん?」


「俺たちさ……

とんでもない人たちの背中、見て戦ってたんだな」


ユウヒは苦笑し、少しだけ肩をすくめる。


「うん……

正直、あの人たちが“本気で敵に回った世界”って、

想像したくもないや」


少し間を置いて、前を見る。


「本当にさぁ」


ユウヒは、はっきりと言った。


「――味方でよかった」


カイトは一瞬だけ笑い、深く息を吐く。


「違いねぇ」


煙が、静かに夜に溶けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ