4 テイマーと冒険者ギルド
本日2度目の投稿です、ご注意ください。
ブルンネンの街に到着すると、シュウは懐かしさに目を細めた。ゲームの時代から100年の時が経っているはずだが、その町並みは少しも変化がないようだ。
お上りさんのようにあたりを見渡すと、記憶の中と1つだけ建物に違いが見えた。しかしそれ以外は記憶のブルンネンそのままのようである。
一通り確認を終えるとシュウはその足で冒険者ギルドに向かった、遂に自分の冒険者ライフが始まると思えばその足並みは軽く、スキップを踏むようだ。しかし残念ながらその喜びは早々に打ち砕かれることになるのだが。
「テイマーがパーティ組めないって、一体どういうことなんですか!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください、1つ1つ説明させていただきますので」
冒険者ギルドの受付カウンターでは、新人受付嬢であるチネッテが新人テイマーであるシュウに詰め寄られていた。
先ほどまで粛々と冒険者登録を行い、制服や初期装備を受け取ると早速とばかりに装着した。その後は静かに冒険者規約についての説明を受けていたのだが、何か質問はあるかと聞かれ「テイマーなんですけどパーティを斡旋してもらうことは可能ですか?」とシュウが聞くと、チネットは申し訳なさそうな顔を浮かべ「テイマーの方はご紹介できない」と答えた結果がこれである。
「ブルンネンではですね、比較的初心者の冒険者の方々が活動を行っておりまして、その都合上即戦力に成り得る方を優先して紹介させていただくというシステムでございまして、申し訳ないのですがテイマーの方は即戦力には相応しくないと言わざるを得ないと申しますか……それに恐らくですがどこのパーティに声を掛けてもテイマーを抱えたいというパーティを見つけるのは至難の業だと思われます」
「……そうですか、わかりました」
それだけ言って会釈をすると、シュウはカウンターから離れた依頼の一覧が貼られているクエストボードの方に歩いて行った。もう少し食い下がってくるだろうと予想していたチネットは肩透かしを食らうこととなる。
(それにしてもテイマーかぁ、冒険者ギルドで働いてもうすぐ1年になるけど、本当に選ぶ人いるんだなぁ)
ギルドの受付嬢として多くの冒険者を相手にしてきたチネットだが、テイマーを見たのは初めてだった、いやもしかしたらベテランの先輩たちも見たことないのではとチネットは考える。それくらいテイマーはマイナーなジョブであった。
何せ、選ぶメリットがまるでないのである。仮に託宣で外れを3つ引いたとしても、外れの王であるテイマーを選ぶ愚か者はそうそう居ないし、なんなら冒険者を諦めてしまう人間の方が遥かに多いのである。
(テイマーは初めてにしても希に居るのよねぇ、希少性の高さに可能性を見出して、あえて外れを選んじゃう人。あの子は言葉遣いもちゃんとしてたからそんなに頭悪そうには見えなかったけど・・・・・・きっと数日で田舎に帰ることになっちゃうんだろうなぁ、少し可哀相)
実際多くの外れを引いた者たちの末路を見てきたチネットはシュウの前途を悲観していた。それでも生きて故郷に帰れたならば幸運な方、運が悪ければ最初の冒険で死んでしまうことだってある。
そういった意味も込みでチネットはパーティの斡旋を断ったのである。別に規約でガチガチに決められているわけではないが、もはやギルド内では暗黙の了解となっており、早く諦めてもらうためにもこれが最善だとされているからだ。
一方のシュウも途方に暮れている状況なのは間違っていなかった、ただそれはチネットの考えていたことと少しズレた思考のもとにであったが。
(多少厳しいかなぁとは思っていたけど、完全にパーティ組ませてもらえないとは思わなかったな……でも仕方ないか、もうテイマー需要が飽和し切ってるだろうし、今更テイマーを育てたいなんて奇特な人たちも居ないってことなのかな)
そう、シュウは自身がパーティに紹介してもらえない理由を既に覚醒しているテイマー達が多数存在するからだと勘違いしていた。現実には1人も居ないし、ソロ活動を強いられているという事実は変わらないのがすれ違いを生むことになっていた。
(どうするかなぁ、せめて廃鉱に行くまでには鍵要員と後衛は仲間に欲しかったけど、この調子じゃ見つからなさそうだし・・・・・・最悪ダンジョン攻略はしばらく延期してレベルアップに専念するか)
ちなみにこの世界にも『レベル』や『ステータス』、『スキルポイント』といったゲーム的概念が継承されている。別にステータスウィンドウが現実に現れるわけではないが、ジョブを得て以降頭の中で全て理解できる状態になり、レベル上昇時のステータスの割り振りやスキルポイントのやりくりまで全て行えるようになる。
なので現在のシュウで言えばレベル1、初期ステータス、スキル無しということになるが、これらは常に確認できるためゲームの時と大差なく、むしろ目で確認する必要がないため便利になっていると言えなくもない。
閑話休題。現状クソ雑魚テイマーであるシュウに残された選択肢は2つである。
1つは奇跡を信じて初期テイマーと組んでくれる奇特な冒険者を探すことである。しかしこれは先ほどの受付嬢の反応を見るに現実的ではない、少なくとも何もせずにボーっと待ち続けるのは得策ではないだろう。
2つ目は効率の悪さを理解したうえでソロ活動を開始するということだ、レベル25までかなりの苦戦を強いられることになるし、ブルンネン周辺に多く生息する『魔法に弱く経験値効率の良い魔物』を見かけても泣く泣くスルーせざるを得なくなるが、背に腹を変えることはできないし、悩んでいる時間すら勿体ないと判断した。
(よし! そうと決まればまずは『ヒーリ草』の採取の依頼でも受けようか、しばらくは依頼の完遂でもらえる経験値で稼ぐしかないし)
ヒーリ草はブルンネン周辺に広く群生している『雑草』である。しかし量を集めて調合や錬金を行うことで低品質ではあるがHPを回復できるポーションを作成できるため、ギルドでは1年中依頼が出されている。
もちろんたくさん集めなければならないので『アイテムポーチ』を圧迫するし、依頼料も他の依頼と比較してかなり少ないが、危険が少なく、そのままの意味で誰にでも出来るため、人気とまでは言わないがレベルの低い冒険者にそれなりに需要が存在した。
そうしてシュウがクエストボードの中から日本語で書かれているギルド公認の『ヒーリ草』100本納品の依頼書を手にしたところで、チネットのいるカウンターから一際大きな声が響いた。
「私がパーティ組めないって、どういうことなのよ!」
奇しくも、どこぞのテイマーと全く同じ理由でパーティお断りを告げられた少女の姿がそこにはあった。
昨日よりも沢山の方に見ていただけているようで、とてもうれしいです。
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