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冒険がしたくって  作者: trustsounds
第二章
88/139

闇々(2)


「ねーお兄ちゃん、私屋台で食べ歩きしたい!」

「こんな時間に食べたら太っちゃうぞー。それでモミジはどうする?」

「わ、私はその……セノディアさんと一緒に歩けるなら何でも……」

「ちょっといつまでいちゃついてんの! ほら、もう良いでしょ!」


 フロントを騙しきり、『始まりの宿』から抜け出した三人は兄妹ごっこを続けていたが、それまで黙りっきりだったアトリアが間に割って入った。


「えー」

「『えー』じゃないでしょリリーちゃん! 作戦は成功したんだから! セノもちょっとその気になってないで! さ、早くいこ!」


 幼い外見を利用してじゃれつく二人に羨ましくなる気持ちを抑えつつ急かす。そこには真面目にショーン少年を捜すぞという意気込みと、やっかみが同居していた。何しろセノディアとアトリアの年の差はたったの二つでアトリアが年下。昔こそは妹キャラは唯一無二の自分の立ち位置だったが、セノディアの忌まわしい記憶を封印するため男装している。公に甘えられないからイライラしていたのだ。

 しかし一方で三人には感謝もしていた。

 これで本当に攫われていたのだとしたら後味が悪い。特に正義感の強いアトリアは一生気に病むだろうと察し、こうして小芝居を打って深夜の王都に繰り出してくれたからだ。


「こんなんバレたら大目玉だよね。メーラさんに何て言い訳するかも考えておかんとな」


 深夜の王都を闊歩する四人の周囲には、昼間について回った余分物は混ざっていない。純粋混じりっけ無しの新米冒険者一行は、兵士達に内緒で作戦を決行していた。

 時間が時間だから彼らを呼べなかったというのもある。しかしそれ以上に現地人の彼らが一緒だと顔が利いて頼もしいが、それと同時に収集できる情報に限りがあることに気づいたからだ。『ラビット・フット』では彼らの立場を利用して半強制的に情報を引き出せたが、それ以上は無駄な軋轢を生まないために手を引いた。これがセノディア達冒険者同士だったら交渉の余地はあっただろう。

 そのため四人は一度、自分達だけで探して回ったら新たな発見が得られるかも知れないと考え行動に至った。


「セノ、先ずはあそこ行こう。『ラビット・フット』」

「あぁ」


 勿論、彼らは路地裏に見つけた『秘密基地』へと足を運ぶことは確定しているのだが、兵士達がいない今だからこそ『ラビット・フット』へ行こうとしていた。

 幸いにも受付嬢は話の分かる人物だった。多少の蟠りこそ残っていれども交渉の余地くらいあるだろう。少なくとも、包み隠さず一から事情を説明してショーンを殴った男の名前くらいなら教えてもらえるはずだ。それに、彼らが泊まっている旅館から少々遠いが、10分~15分くらいで到着するのも理由として大きい。フロントと約束を交わした一時間というタイムリミットと往復する距離も考慮すると妥当な場所だ。

 だが、彼らは『ラビット・フット』に到着すると立ち止まってしまった。


「……は? いや……あーダメだ。完全に閉まっている」

「え、本当に?」

「何て言うか、その、意外に早く閉めちゃうんですね……」

「ね」


 彼らの期待をを裏切り『ラビット・フット』の扉は閉めきられていた。昼間の喧騒もどこへやら、周辺一体は静まりかえっている。

 『ラビット・フット』は規模が多きなるに連れて制御が効かなくなり、王都に迷惑をかけていたことを自覚していた。幹部は住民を困らすことは本懐ではなく、むしろ避けるべきだという考えを持っていたため、少しでも彼らとの間にこれ以上亀裂を生まないよう、周辺住民への配慮から深夜帯の営業は控えるようにしているのだ。


「アテが外れたね……」

「じゃあ行く場所はあそこしか無いだろう」

「「路地裏の『秘密基地』!」」


 ショーンと孤児院の子供達三人で作り上げたという『秘密基地』――――リリーとモミジの声が綺麗にハモった。


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