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冒険がしたくって  作者: trustsounds
第二章
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追跡(1)

 『ラビット・フット』の外。メーンストリートを歩く一行は項垂れていた。ショーン少年に暴力を働いた冒険者の足取りを追ったものの、その男が帰ってくる日程も、どのクエストでどこに出向いているのかも、名前すらも不明。

 これでショーン少年の手がかりが一つ潰えたことになるが、他にも足取りを追える案があるにはある。孤児院の少年二人が口走っていた"秘密基地"だ。幸いにも『ラビット・フット』の近場という情報を得ているため、直帰せずに寄り道して探せば時間を無駄にせずに済む。しかし孤児院からの去り際に、院長から「詳細は子供達から聞き出すので二日後にまた寄ってください。明日は『始まりの宿』の経営担当さんと今後について相談するので……」と言われたので、それを待てばいい。

 ただその間にすることが無いので、その時間をどう使えば良いのか分からない。もう一度『ラビット・フット』を訪ねるわけにも行かず、かと言って情報収集も昨日いっぱい時間を使ったため出がらしだ。新たな情報など出やしないだろう。


「……メーラさんの力を借りるか」


 もう一度『ラビット・フット』に行く。その選択肢を取るためには、強制的になるが並ならぬ権力を持ったシュゼット・メーラに手伝いを仰げばいい、という安易な考えだ。


「何だと……?」


 それを聞き逃さなかったシアが嗜めた。


「いいか、お前は何とも思っていないようだが『近衛兵』は王から賜れるこれ以上ない称号だ。一代限りという誓約があるが、領地を持たずして上位貴族と同等の待遇が保証される特別勲位……。全ての兵士の憧れと言っても過言ではない本来ならお前のような平民と関係を持つことすらあり得ない事だ。立場も、権力も、実力も、お前の遙かに上回る。そんな気軽にに呼び出して会えると思うなよ」

「へいへい」


(多分会ってくれるだろうな)


 生返事するも、脳内ではシュゼット・メーラが快諾する様子しか思い浮かばなかった。王の話によれば彼女は国を襲った《ドラゴン》を討伐し、それによって『近衛兵』を賜ったらしいが、人の良さそうな彼女からはとてもそうには見えない。ただフォレストウルフとの戦いでは明らかに場慣れしていたので並の兵士よりは強いだろうと想像が付くが。


「あ、あのっ、このまま時間を潰すなら、その、図書館にもう一回寄ってもいいですか……?」


 モミジがおずおずと手を挙げて提案する。


「うーん……。そうだなぁ、このまま何やっても手がかりが得られないだろうし、それなら少しでも時間を有効活用するために図書館にでも行くかぁ……」


 その言葉にパアァと顔が明るくなるモミジ。どうやら先日調べた程度では、彼女の知識欲を満たすに足りなかったようだ。


「それならば、今日は我々とここでお別れだな」

「そーッスね。じゃあ解散、お疲れ様ってことで――――」


 別れを惜しむことなく兵士達と別れようとする。

 その時だ――――。


「――――あっセノ! あれ! あれぇッ!!」


 アトリアが素っ頓狂な声をあげてセノディアのホッペタを掴み、人混みのある一点向けて無理矢理顔を動かした。


「いっでぇ! お前俺のホッペタ切れてんだって――――」


 いきなり首を20°ほど捻られたセノディアはリアクションを取るも、アトリアが意味もなく暴挙に打って出る性格ではないと熟知している。ひとまず彼女に動かされた方角を見る。


「あ……え?」


 そして間抜けな声をもらした。


「――――~♪」


 なんとごった返す人混みの中に、自分達が探していた冒険者の男がいたからだ。長身でガタイがよく、アトリアとの決闘に用いた剣を帯剣している。男は呑気に口笛を吹きながら『ラビット・フット』に近づいていた。


「――――ッ!」


 その途中でセノディア達に気づき表情が驚愕に染まる。まさか追いかけて来るとは思ってもなかったのだろう。

 しかし驚いたのはショーン少年の足取りを追っていた一行も同じだった。なぜならつい先ほど、この男は長期クエストで王都にいないと冷たくあしらわれたばかりだったからだ。


「チッ!」


 男は舌打ちして踵を返しごった返す人混みをかき分けながら逃げた。


「あ、おい待て!」


 一行も急いで男を必死で追いかける。兵士もガシャガシャと鎧を重たそうに揺らしながら、冒険者に置いていかれまいと必死に走った。


「ハァハァッ! あ、あれ……この道って……?」


 道中、息を切らしながら走る一人の兵士が見慣れた王都の風景を眺める。彼は自分がどこをどう走っているのかに気づくと、徐々に足取りを緩めていった。


「フゥ……フゥ……ッ! ねぇシア、もしかしてこの先って……」

「あぁ私も同じ事を考えていたよ」


 その動きは他の兵士にも伝染し全体的に小走りになっていく。自分達がどこを走ってどこに辿り着こうとしているのか勘づいたため、急ぐ必要はないと判断したからだ。


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