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冒険がしたくって  作者: trustsounds
第二章
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孤児院を訪ねて(1)


「ねぇ~お兄さん、私と遊んでいかない?」

「ちょっとやめなよエリー、はしたない」

「いいじゃないのちょっとくらい、最近男日照りなんだし。それでどう、お兄さん?」

「すみません、今ちょっと子供を捜していて……」

「子供を捜している?」

「それって最近噂の攫われた子供……?」

「それと関係があるのかどうか分からないですけど、獣人族の子供なんですけどこれくらいの身長で、目深に帽子を被っていてですね――――」

「あぁそれなら――――」


 アトリアは『ラビット・フット』に所属している男と揉めていた近辺で獣人族の少年について尋ねて回っていた。アトリアの清潔感のある爽やかな王子様フェイスに、彼女が巷を賑わす『冒険者』であろうと無かろうと見惚れる女性は少なくなく、それを有効活用しての情報収集だ。

 前日、庭園の四阿にてシュゼットの申し出を承諾した冒険者一行だったが、彼女が提示した『同業者であるセノディア達の協力によって騒ぎを起こした冒険者確保の手伝い、また冒険者としての見地からのアドバイス』は確約せず、代わりに『獣人族の子供を見つけたい』というアトリアのリクエストを優先させる口約を交わしていた。と言っても、"その道中でもしも騒ぎが起きたらそちらを収めるのに冒険者として一役買う"というついでの約束付きだが。

 まずはその足がかりとしての聞き込みだ。


「セノ~、あの少年はやっぱり孤児だったらしいよ。それで預けられている孤児院施設も聞いてきた!」

「あぁ遠目に見てたよ。逆ナンされる所もな」

「え、何? もしかして羨ましかった?」

「馬鹿な事を言ってねーで行くぞ」

「あ、うん」


 のべもなく若干呆れ気味のセノディアの後ろを小動物のように小走りで着いていく。二人の先には朝市で買ったお菓子を頬ばるリリーとモミジ、それに眠気たっぷりの欠伸をしながら二人の見張りをするベッティとシアがいた。







「『ノアの止まり木』、ここですね?」

「船のへりに停まる小鳥……間違いなくそうだ」


 王城を離れられないシュゼットの代わりに案内役兼目付役として派遣されたベッティとシアの両名、それに3人の兵士の計五名を引き連れて、獣人族の子供が住んでいたという孤児院施設『ノアの止まり木』を訪れていた。十数人の孤児を預かっているだけあって家屋は大きく、船のヘリを模した屋根の上には風化しそうなほどにボロボロの風見鶏が風に揺られている。


「……それで、どうするんだ?」


 シアに聞かれたセノディアは一考する。

 彼も彼なりに孤児院を探っていたのだが、その過程である情報を耳にしていた。それは『資金難』。院長の経営や国政や有志による募金・ボランティアなどで孤児院は成り立っている。しかし最近では「リフォームするお金すらない」と院長が嘆いていたらしい。クリーム色と灰色の入り交じった外壁がそれを物語っていた。

 そのため、『孤児院の責任者が孤児を売り渡す』可能性も否定できずにいる。特に貧窮した家庭が子供を娼館に売り渡すなどの忌避したくなる不愉快な話は、冒険者をしていると嫌でも耳にしている。孤児院の責任者である院長も、そのケースはなきにしもあらずだ。


「うーん……」


 まず連れてきた兵士全員で入ると不安を煽るのでダメ、しかし兵士がいた方があちらも安心し話し合いをスムーズに行われるのも確かだ。警戒心を解くために子供のリリーかモミジを連れていくのも有りだが、複数人の冒険者で行くのは刺激してしまうのでダメ。アトリアは頭に血が上ったらまともな話し合いができそうにないからダメ。

 兵士一人、それに自分が行くのがベストだろうと結論づける。


「……じゃあシア、俺と一緒に行こ。残りはここで待っててくれ」

「おいおい、何でお前が仕切ってんだ」

「よそ者の『崩れ者』の癖によぉ――――」


 指名から外された他の兵士達は、自分達のホームでよそ者に、しかも目の敵である冒険者に決定権があるのに不服な態度を隠そうともしない。


「……分かった」

「あ、おいシア!」


 しかしシアが大人しく指示を聞き入れたことに驚いた。堅苦しく、また頭でっかちでもあるため冒険者に対して否定的な意見を持っていたはずの男だからだ。


「ちゃんと調べてくるのよ」

「言われるまでもない。行こう、セノディア君」

「べ、ベッティ……?」

「何か様子違くないか……? いつもより丸くなったような……」

「文句ある?」

「いや、別に無いけど……」

「まぁまぁ兵士さん、さっき買ってきたお菓子でも食べながら待ちましょう?」

「ど、どうぞ……」

「……」


 その上、あの『実力はあるが跳ねっ返り』で有名なベッティまでもがそれに従うのだから、モミジにおずおずと差し出された紙袋に入れられた『ポテトチップス』を食べて待ち惚けする以外の選択肢はなかった。


「すいませーん」


 セノディアは孤児院のドアをノックして責任者を呼び出す。

 シアは相変わらず甲冑に身を包んだ状態だ。町を取り締まる兵士が来たとなれば、相手は警戒してしまうだろうということで、シアはセノディアの後ろに佇んでいる。


「はいはい、今行きますよ……」


 中からは嗄れた老婆の声が返ってきた。ほどなくしてドアが開かれる。


「おや兵隊さんですか……。それに……あらその冒険者バッジ、隣町の冒険者も……」

「こんにちはお婆さん、ちょっと聞きたいことがありまして――――」

「――――失礼ご婦人」

「わわっ!」


 シアは本題を切り出そうとしたセノディアを押し退けて、ずいと前に出る。


「ここに住んでいる獣人族の孤児についてお話を伺いたくお訪ねした次第です。お時間は少々取ってしまいますが、どうかご理解の程お願いします」


 やはり彼には彼なりのプライドがあるようで、ホームでのイニシアチブは常に取っていたいらしい。「それでスムーズに獣人族の少年に関して話が聞けるならなんでもいいか」と、セノディアはシアの影に隠れて置物に徹した。


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