深まる謎(2)
「え、今サラッと『《勇者》は異世界から来た』っつた?」
「うん言ったよー? 一言一句間違いなく『異世界』ってね。なんか『にっぽん』って異世界らしいんだけど……知ってる?」
「いやいやいや初耳だし……。で、その《勇者》は何で俺達の世界に呼び出されたんだ?」
勇者生い立ちの核心に迫っていることにバクバクと高鳴る心臓を抑え、声のトーンを抑えつつ更に情報を聞き出そうと試みる。
「クァ」
「あっ」
しかし《勇者》というワードに惹かれたクロエがバッグの中から「こんにちは」しそうになったため、セノディアは視線を配りながら彼女の口に人差し指を当てて静めた。素早く、且つ自然に口を押さえたため、幸いにも誰にも気づかれていないようだ。
「カカカッ」
それを見たリリーは愉快そうに笑い、セノディアの腕をグイグイと引っ張った。
「ねぇーお兄ちゃん、そんなことより絵本読みたい~」
「……はぁー。俺の《エクスプローラーマスタリー》も知ってそうな口ぶりして、毎回毎回気になるところで情報を小出しにしやがって……。ぜってーいつか根掘り葉掘り聞くからな」
「あれ、《勇者》についてはもういいの? 気にならないの?」
「気になっけど、どーせ気分が乗らないと喋らねぇべ」
「うん!」
「な? じゃあ聞かねぇよ。それまで自分で調べられるだけ調べてみる」
セノディアも若干だが天の邪鬼な性格をしているため、直球に聞き出そうとしても彼女が話さなくなることくらい分かっていたのだが逸る気持ちを抑えきれなかった。案の定、気まぐれな《魔王》に「喋らない」とキッパリ言い切られてしまった。力任せでどうこうできる相手でもないので、相手が話したくなるまで放置する以外に無いだろう。
それに彼女は最初から自分の知識欲が最優先、早く自分が封印されて世界がどうなったかを知りたいからこそ話を切り上げた方が合理的であると判断したのだ。
「お兄ちゃんのそうやって一歩引けるところ、私大好き! 後で眷族にしてあげるね!」
「保留で……」
リリーが無邪気に振る舞いながらセノディアの腕に自分の腕を絡ませて体を預けてきた。モヤモヤした気持ちを抱いたセノディアは若干嫌そうな顔をしたものの、振り解くこともできずにそのままにさせながら、司書と思わしき男性に話しかけた。
「すみません」
「はい、こんにちは。何かご用でしょうか?」
「《マスタリーシステム》について調べ物をしたいのですが、本のある場所が分からなくて……」
「《マスタリー》ですか……。それでしたら正面の階段から二階、右手突き当たりの一般開架室にありますよ」
そう言って司書は展示物の奥にある大階段を指さした。
「二階の右手突き当たりですね。ありがとうございます」
「いえいえ、探し物が見つかるといいですね」
司書にペコリと頭を下げてお礼を言い、ロビーのベンチに座るアトリアとモミジの元へ向かった。
「《マスタリー》関連は二階の突き当たりにあるってさ。行こうぜ」
「ん、分かった」
「あの、そこに魔法関連の本もあるでしょうか……?」
「あー悪いモミジ、それは聞いてこなかったわ。聞いてくればよかったな」
「《マスタリー》の本が揃ってるなら《攻撃魔法》や《補助魔法》の本もあるんじゃないかな?」
「あ、なるほど……」
なんて掛け合いをしながら階段を上り、目的地である『一般開架室』とタグのかけられた部屋に到着した。中は以外と広く様々な本が取り扱われていた。《マスタリー》以外に純文学や古典などの創作物、歴史書のコーナーもあったためリリーが目当てとしている本もあるだろう。
四人は他の閲覧者の邪魔にならないように小声でこれからの予定を話す。
「俺は《マスタリー》の本探してくる。《エクスプローラー》が何のか分からないと戦力にならないし」
「僕も気になってるからそれ手伝うね」
「じゃあ私は《メイジマスタリー》についての本を探してきます」
「私は色々見て回りたいなぁ~」
「んじゃあ2~3時間くらいしたら声かけっから、そしたら王様にオススメされた宿に行こう」
「「「はーい」」」
四人がそれぞれセノディアとアトリアは《マスタリー》についての資料を、モミジは魔法関連の資料を、リリーはモリノティス史が詰まった蔵書を探して読み始めた。




