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冒険がしたくって  作者: trustsounds
第一章
27/139

vs飛竜(4)


 アドレナリンで目が血走っているセノディアは、飛竜の機転を利かした奇襲を素直に称賛する。

 《ブレス》を撃つと見せかけて、石柱を壊してアトリアの動きを封じる算段だったのだろう。

 かつて対峙したアストレイベアは、本能の赴くままセノディアに襲いかかってきていた。

 けしかけられた可能性はあるが、少なくとも本来のアストレイベアには、飛竜ほどの知性は欠片も持ち合わせていないだろう。

 感嘆する以外にない。

 それと同時に、心の奥から沸き上がる熱も感じていた――――。


「グラウウウウゥゥ…」


 飛竜は頭を振って瓦礫を払いのける。


「ひとまず引くぞ、アトリア!」

「うん!」


 二人は飛竜に背後を見せ、まだ形状を保っている石柱へと走り出した。

 今ブレスを撃たれたら遮る物が無くなってしまった現状、防ぐ術が二人にはない。であれば、残された三本の石柱の内、一番近い石柱に身を隠そうと走り出すのは当然の帰結であった。


 だが、もしもそれすら飛竜の計算だとしたら――――。


「ギュアゥ――――ッ!!」



 ――――二人が逃げ出したその一瞬、飛竜は宙を舞った。


 アトリアとセノディアは背中を向けて逃げていたが、叫び声と唯ならぬ気配に背後を振り返った。


「は……?」

「え……?」


 そして揃って二人とも目を疑い、拍子の抜けた声が口から洩れた。

 この部屋は飛竜にとって狭い空間で、今の今まで空は飛べないと決めつけて戦っていた。

 実際、戦いながらも空を飛ぶ気配など一切無かったし、両翼の中心部分に傷を負わせた上、翼を動かす動力部分の右肩にも毒や矢でダメージを与えていた。

 『飛竜が飛べる』という判断材料を、減らしに減らして戦っていたのだ。

 だが現実はどうだ。

 どちらかというと、飛ぶというより跳躍して滑空した形だったが、地面から30cmほどその巨体を浮かべて、休憩所の狭すぎる空を飛んでみせたではないか。


「ギュアァッ!!」


 しかしやはり、安置からハメられた時に蓄積していた毒や矢によるダメージは、ボディーブローのようにジワジワと効いていたようで、滑空した飛竜は右翼がまともに動かないでいた。

 フラフラと不安定に動き、左に傾いてしまっている。

 それに左翼も満足に羽ばたけていない。

 先ほどの三人による連携で、両翼の中心部分に手傷を負わせられたからだ。


「グアウッ!!」


 それでも獲物を見据えた飛竜は、上級モンスターは文字通り化け物だと証明してみせた。獲物に襲いかかる瞬間、その一時だけ空中で制御し体勢を整えてみせたのだ――――。

 怪我をしていない右脚の爪を燦めかせ、その爪先は再三アトリアに据えられた。


(間に合えッ!)


 アトリアは逃げる先にあった石柱に隠れようと、思い切り地面を蹴って走る。

 かつて無いほどに限界を超えたスピードで、出し切れるだけの力を出し切る全力疾走したつもりだった。


(あ、足元が……)


 だが現実は、壊された石柱の瓦礫に足を取られ思うように走れない。これも飛竜は計算していたのか――――。

 逃げられるよりも速く、それよりも鋭く、飛竜は無慈悲にもアトリアの背後に迫った。


「グガアアアァァッ!!


 迫ってしまったのだ――――。


(あの時と一緒だ……。僕、今度こそ終わったかも――――)


 アトリアは身に迫る死を理解し、覚悟した。

 かつて彼は、とある事件に巻き込まれて死にかけた過去がある。

 その時は噎び泣いて、声が枯れん限りに叫んでいたが、今は涙を流す余裕すらない。 

 死はいつだって無慈悲に、理不尽に、平等に訪れる。

 そんなもの、冒険者になると決めていたときから覚悟はできていた。



『セノ! 目を覚ましてよ! セノォッ!』



 ――――いや、あの事件からできていたつもりだった。


 だが二度目とは言え、死に直面すると……嗚呼、死を理解するだけで、恐怖や悲嘆の感傷に浸る余裕も、別れの言葉すら紡げないとは――――。


(ごめんね、モミジちゃん、セノ――――)







「――――ッアアアアアァァ!!!」






「うわっ!?」


 ――――この男は、セノディアは最後の最後まで諦めなかった。

 アトリアをタックルではじき飛ばすと、無謀にも、獲物をガッチリと捕まえようとしている足元に躍り出たのだ。

 そして振り下ろされたかぎ爪に、全身全霊を込めて片手斧を振り上げた。


「ッツオラァ!!」

「グガアアァッ!」


 バキィン――――!


 アトリアの時と同様、低ランク武器の強度の差がモロに出てしまい、簡単に手斧が壊れてしまう。

 それどころか地で力負けしていたので、受け止めた衝撃でセノディアは、腕、胴体、足へと凄まじい衝撃が伝わっていった。


「グアァッ……んの野郎ォ!!!」


 腕や脚は一瞬でパンパンに膨れあがり、鼻から少しばかり血が垂れている。

 しかし愛用武器を犠牲にした一打は確かに効果はあった。一時とはいえ爪を弾いたのだ。


「ギャウゥッ!」


 だが、防げたのは爪の一撃だけ。飛竜は咄嗟に首を振り抜いた――――。


「カハッ――――」


 セノディアも反応して腕で防ごうとするが、攻撃を弾いたせいで腕が痺れて間に合わない。

 振り抜かれた頭部はがら空きとなったセノディアの横っ腹を叩いた。

 内臓を圧迫されて口から空気が漏れだし、体はくの字に曲がって転がっていく。

 だが、手斧を失った悲しみに暮れる余裕も、痛む手足や腹を労る余裕も無い。セノディアは転がった体勢から起きあがれないが、それは飛竜も同じだった。狭い室内で無理矢理な滑空、おまけに体勢を崩してまでセノディアに頭突きをしたせいで、飛竜は横向きで体を打ち付けるように着地してしまう。

 追い打ちのチャンスは今しかない――――。


「だ、《濁狼》!!」


 今更恐怖が襲ってきたのか、それでも自分を庇ったセノディアを前にしてスイッチが入り、目尻に涙を溜めたアトリアは着地に失敗した飛竜の――――凍傷によって負傷していた左脚に、剣を一本に持ち替えたスキルを放った。

 《濁狼》と呼ばれるスキルは横一閃に斬り結ぶ剣技で、威力としては剣一本ながらも下級冒険者が扱えるスキルの中で群を抜き、《二双紋》を越える威力を持ったスキルだ。

 ただし、魔力の消費すらも《二双紋》を遙かに上回るので、そう連発はできないが、ここぞで使えばこれ以上ない逆転の一手にもなるスキルとも言えよう。

 ――――そして今回は正しく、効果はバッチリと表れた。


「ギュオオオォォン!!」


 一文字に斬られた左脚は、無理に飛んで着地した衝撃もあってか、ズパンッと綺麗に切り捨てられた――――。

 元々、無理矢理翼を動かして飛んだせいか、飛竜はあっさりとその場に倒れ込む。

 間違いなく、この戦いで目に見えて致命打となる一撃を放ったのは、前衛の火力中枢を担っていた《ソードマスタリー》のアトリアだった。


「セノ、ごめんね、僕のために……。ごめんねぇ……」


 しかし、アトリアはその功績を誇ることなく、涙目のまま、地面を転がったセノディアに走り寄ってしまった。

 セノディアは、爪と頭突きを受け止めた衝撃で骨が折れて内臓を傷つけたのか、口の端からも血が垂れている。


「バカお前……いいから飛竜に集中しろって……!」

「分かってるよぉ……! でも、でも……!」

「……ったく、お前変な所で泣き虫なんだから……。――――おい、後ろ!」


 自分を放って置くなと言わんばかりに、ブレスを撃つ構えをしていた。


「ギュオオオオォォ――――」


 左脚が切断されたからか、痛々しそうに地面に横たわっていた。だが、横になりながらも開かれた口先から零れる火は既に二人を捉えており、射程も申し分なく遮る物は何もない。

 飛竜からしてみれば、命が助かってホッとしている二人を焼き払うには絶好の機会だ。

 いや、絶好の機会だった――――。




「――――闇に佇む星達よ、我等を導く標となりて、その輝きの力を示さん……。遍く一筋の光りとなりて顕現せよ!《モータルバインド》!」




 だが、それを許さないのがこのゴスロリ幼女――――モミジだった。

 モミジは最初のフリーズ以来、何も攻撃はしていなかったが、それはこの魔法を使うために魔力を溜めていたからだった。

 《モータルバインド》は《サポーターマスタリー》が得意としている魔法の為、詠唱も必要になるし、適正スキルではないから魔力消費もバカにならない。

 だがその効果は抜群で、詠唱を唱えたモミジの杖の先端から闇の衣を纏った鎖が何本も飛び出し、飛竜の頭部をがんじがらめに縛り上げた。

 このスキルを使いこなすには、D~Cランクのとあるモンスターと何度も戦いコツを覚える必要があるのだが、モミジは元々魔法使いとしての才能があったおかげで、中級冒険者も驚くべき精度を持ってしてスキルを放つことができた。

 精度とは、魔法を撃つ時の触媒制御もそうだが、放った魔法がどういう軌道を描くかも含まれている。それをこのゴスロリ幼女は土壇場で――――セノディアとアトリアを救いたい一心で成功させたのだ。


「ギュルウゥゥ!!」

「嘘ッ……!」


 しかし、飛竜は腐ってもBランクモンスター。

 《ブレス》は不発に終わったものの、格下の魔法である《モータルバインド》を――――パキィンと数秒持たずに鎖を破壊した。

 魔力で構成された鎖を壊すのは物理ではない、壊すのもまた魔力だ。それだけの魔力を、飛竜は《ブレス》を吐く要領で全身から発し、糸も容易く闇に染まった鎖を壊した。


 だが、パーティ全体として鑑みるならば、それすらも連携の布石に過ぎなかった――――。


「ナイスモミジちゃん!!!! いっけえええええェッ!!! セノオオォォッ!!」

「ギュアァッ――――!?」


 鎖を壊した飛竜は、声に反応して咄嗟にアトリアを見やる。

 そこにセノディアはいない。アトリアはモミジを称えながらも、その顔は自分達にとって広すぎる天井を見上げていた。


「もーらった」


 時間にして僅か5~6秒。

 セノディアは、《モータルバインド》で飛竜の身動きが取れなくなったその瞬間、押しつぶされそうな打撲・骨折の痛みに耐え、口の端から血を流しながらも、空を飛んだ飛竜に目には目をと言わんばかりに宙を舞っていた。

 彼は《ハイジャンプ》が使えないのだが、そんな彼が空を飛んだ原理は至って単純。

 アトリアが《ソードマスタリー》のスキル、《雷翔》を発動したのだ。

 魔力を込めて逆袈裟――――要するに切り上げするだけの簡単なスキルで、一般的にコンボとして繋げていくための初動として愛用されるスキルである。

 だが本来の使い方とは違い、なんと長剣の腹にセノディアの片足を乗っけて上空へと振り抜いたのだ。

 しかし成功したから良かったものの、失敗の許されない正念場で飛ばす方の胆力も凄まじいが、それで飛べる方も驚異的なバランス力だ。

 飛ぶ方のセノディアに至っては、直前にアトリアを庇ったせいで全身むち打ち状態の怪我まで負っている。打ち合わせもなくリカバリーができない状況で、お互い息のあったコンビプレイも従兄弟ならではと言えよう。

 体の自由が効かず、意識を近接職二人から逸らした瞬間を狙った二人のコンビネーションプレイは、完璧なタイミングで飛竜の虚を突いた。

 もしもコンマ一秒遅かったら、飛竜は易々と避けただろう。

 ――――それは『もしも』の話だが。





「だりゃああああああァァァ!!!!!!」





 砕け散った手斧に代わり、その手に握られたミスリル製のナイフは、湾曲した二本の角のど真ん中、正に渾身の一撃――――飛竜の脳天に突き立てた。





「ガアアアアアアァァァッ!!!」





 悔しさからか、はたまた称賛なのか、飛竜は頭からどす黒い血を流し、重低音の効いた断末魔を上げてドサリと床に倒れ伏す。しばらくもがき苦しんだが、やがて動かなくなった――――。


「ハァ……ハァ……。勝ったのか……」


 セノディアは短剣を頭から引っこ抜き、動かなくなった飛竜の頭を小突く。頭は揺れたが声は発さない。

 試しに首元に手を添えてみるが――――もしかしたらセノディアの手が痺れているからかもしれないが、血の流れは感じられない。

 つまり――――。


「ヤッタァー!! やったよセノオオオォォーッ!!」

「っとと……」


 勝利の鬨を上げてアトリアがセノに抱きついた。あの頭突きを受け止めた痛みに顔を歪めるが、彼も嬉しそうに抱き返した。


「セ、セノディアさん……本当に……本当に私達だけで飛竜を……」

「あぁ……多分、死んでると思う。俺の……あぁそうさ、俺達の勝ちだよ、モミジ……!」

「セノディアさんんんん……!!」

「っとと……」


 緊張の糸が切れてしまい、喜びや恐怖といった様々な感情が雪崩のように押し寄せてきたモミジは感極まり、涙目になりながらゴスロリ服がしわしわになるのも気にせず、後ろからセノディアに抱きついた。アトリアとモミジにサンドイッチにされたセノディアは、苦笑し、頭を撫でる。


「よくやった、マジで最後のはナイスだった。あの魔法が無きゃあトドメは刺せなかったさ……。本当に、よくやってくれた。サンキューな」

「う゛う゛う゛ぅぅぅ……!」

「やったぁセノおおぉぉ……」

「おまえらなぁ……」


 周りでパニックになった人間がいれば、自然と自分は落ち着く現象がある。その現象にセノディアは陥っていた。彼としも上級モンスターを倒した喜びを分かち合いたいし、鬨の叫び声も上げたかった。

 だが、こうも抱きつかれ身動きが取れないのでは、それも叶わないだろう。今は持ち前の冷静さから、パーティリーダーとしての矜持を果たしていた。

 そしてその冷静さが、結果的に奏功した――――。


(……ん?)


 苦笑していた彼の顔から、不意に笑みが消える。

 足裏が僅かばかり沈んだ。それはまるで、底なし沼に足を突っ込んだかのような、崩れる砂丘を登ろうとした時のような、そんな歪み。

 それを冷静だった彼が、彼だけが、この場で足元の歪みをキャッチしていた――――。


「うわっとと!」

「キャッ!」


 彼は咄嗟に抱きついていた二人を、自分の立っていた飛竜の死体から突き飛ばした。それと同時に、バキバキと硬質な物が割れるような音がした。


「セノ!?」

「セノディアさん!?」


 彼の行動は、パーティ全体として考えるならば吉と出た。

 飛竜が死んだと共に、死体に接していた床が密かにひび割れを起こしていたのだ。

 飛竜の重さが原因なのか、暴れまくった結果こうなってしまったのか、というか下に空間なんかあったのか――――。

 そのひび割れは音もなく進行していたが、既に目に見えて亀裂がハッキリと分かるほどにまでになっていた。


「うおッ!?」


 そして無情にも、床は崩れた――――。


「っざけんなッ!」


 部屋が崩れゆく中でも、セノディアは飛竜から安全な場所へ飛び移ろうとジャンプを試みた。

 彼は二人を助けたが、これっぽちも自己犠牲の精神で突き飛ばしたつもりはない。二人を助けた上で、当たり前のように自分も助かるつもりだ。

 飛竜の素材は売ればかなり高額な金になる。冒険者一行に取っては非常に惜しいが、こうなっては仕方がないだろう。飛竜の死体は見捨てるしかなかった。


(嘘だろ……)


 しかし、飛竜を倒したことで張りつめた緊張の糸が切れてしまったのか、普段の跳躍力を発揮すれば楽々と届くであろう距離すらも、彼にとってはとても長く、とても遠くに感じられた――――。

 それは気持ちの問題だけでなく、飛竜と戦った身体的疲労も原因であった。むしろ逆に、今の今までよくもまぁ平気な顔をして立っていられたものである。

 落ち行く奈落の崖、彼は岩壁を掴もうと、必至に手を伸ばした。


「セノッ!」


 アトリアは慌てて身を乗り出し、飛び出したセノディアの手を掴もうと腕を伸ばした。

 だが――――。


「セノオォー!!」


 ――――指先を掠めるだけで、届かない。キャッチできない。

 あと数センチ身を乗り出していれば――――、あと数センチ彼が跳躍できていれば掴めた距離――――。


 しかしその距離は、決して埋まることは無かった。


「吹き抜ける一陣の風よ、彼の者に衣を纏いて衝撃を雲散せよ! 《ウィンド・フロート》!」


 間一髪。

 モミジは《アイスボール》を連発し、《フリーズ》や《モータルバインド》などの魔法を使った直後だったが、僅かばかりに残った絞り粕しかない魔力を杖に込め、《ウィンド・フロート》の呪文を唱えた。

 これは、衝撃を軽減するシールドを任意の対象に付与できる魔法だ。


「きゅぅ……」

「モミジちゃん!」


 しかし、これもまた《メイジ》の適正スキルではない《サポート》の魔法。

 幾度も適正マスタリー以外の魔法を使ったことにより、彼女の体から急激に魔力が失われ、再びモミジは眼を剥いて倒れてしまう。

 何度も言うが、適正のあるスキルや魔法でないと、魔力の消費は尋常じゃなくバカでかいのだ。

 《フレイムウォール》、《モータルバインド》、《ウィンド・フロート》。

 《メイジ》ではなく《サポーター》が適正の補助魔法を立て続けに唱えれば、そりゃ意識が経たれるのも道理だろう。

 しかし驚くべきは、その尋常ならざる魔力の保有量。

 普通であれば、下級の補助呪文であっても一つや二つ唱えればそれだけで息切れを起こすものだ。元から魔力量の多いモミジであったが、それだけでは説明のつかない魔力量。

 マスタリーが一つしか選べない場合の特典は、どうやら持ち前の魔力を増幅させる効果らしい。


「モミジちゃん……は魔力切れだから……、今はセノか……」 


 しかし緊急事態につき、そんな事実に気づく者は一人もいない。一度見た症状から、モミジは魔力切れを起こしただけだと判断したアトリアは、セノディアの安否を優先させた。

 自分の上着を敷き物にしてその上に目を剥いたモミジを寝かすと、セノディアと飛竜が落ちていった穴を松明で照らした。

 一応瓦礫にロープを繋いで穴に垂らしてみたものの、長さは15~20mほど。松明の光りが全く届かないことから、間違いなく垂らしたロープ以上の深さはあるだろう。自分の持っている道具だけでは助けられないと判断したアトリアは、自分が使う予定だった青ポーションをモミジの口に少量注いで彼女を背負った。


「……セノ、待っててね。必ず助けに来るから」


 そう言い残してアトリアは休憩所を後にした。ダンジョンの小部屋を探し、何かセノディアを助ける手だてがないかを探るために――――。



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