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龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 子龍
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子龍-013 ここには時を止めれる者がおります

「偽バイローンが、今、玉座の間で、わしの代わりに、第五皇子の説得にあたっておる。という事実を、お前はどう考えるかの?」


王がアントラックへ告げた。あたりの空気が重くなった。

「あの第五皇子を、説得しつづけているのであれば、愚かな男としてあまり深く考えることもないかと思われますが」

「第五皇子を人質にしているかもしれぬな。わしがここへ行ったと知った時点で、偽者だとばれたと覚悟を決めたやもしれぬ」

「王陛下。しかし、ここには時を止めれる者がおります。しかも、第五皇子が熱望している男です。第五皇子を説得して、こちらに連れてくるにはちょうど良いかと存じますが」

アントラックの進言に王は首を横に振った。

「よい考えだ、と思えるほど、わしはそこのサテンを信じてはおらぬわ。時を止めれるかどうかではなく、人間性を信じられぬでな。大事な皇子の使いには出せぬ」

「陛下のお疑いは深いのでしょうな?」

「ララルーアが連れて来た者じゃ。どうしたって信じることはできぬ」

と苦笑した。

「ならば私が」

と第一皇子が言った。すっと前に出て、片膝をつく。すると、即座に、

「ならぬ」

と王が声高く否定した。

「なぜでございますか?」

「おまえはだめじゃ」

皇子はしっかり正面を見て、王に、

「私はそれほど信じられぬ者でございますか? 第一という皇子の地位を頂いたと言うのに、本当に信じていただけていないと言うことでございますか?」

と苦い声で言い募る。

「おまえは第一皇子である!」

と王がきつい声で言った後、低い声で、

「そしてじゃ。周囲に、玉座の間を乗っ取られたのを知られてはならぬと進言したのはお前じゃろうが。今すぐ、議会に行って何事もないかのように参加せよ。わしの代わりに座って、うんうんとうなずいているがよい」

「しかし、私が、それこそ、時を止める魔法のような力があるのでしたら、私の時だけ動かし、私が第五皇子を救出してまいりましょう」

「信じていないわけではないが、もしも、第五皇子の救出に失敗したとき、おまえは何とする?」

「失敗はいたしませぬ。が、しかし、万が一失敗したとしたら、わたくしの地位を落とし、地方へやっていただければ」

「ばかもの!」

と王は怒鳴った。そして、

「皇子二人を人質に取られるような愚を犯せと言うのか?! と聞いておるのじゃ!」

王は、よろめきながら、腰を落とした。どっと椅子に腰を掛けると、周囲の者が近寄ってきて、ブーツを脱がせ足をもむ。王は煩わしそうに彼らを下がらせるのだが、王の足は凝っているのか、痛みがひどいと知っているのか、離れず黙々と手を添える。王はされるがままになりながら、目の上に指を置いて、うっすらと目を開けた。離れた所にいた皇子に、近寄るようにと手を上げる。第一皇子は、そこで初めて、サテンの傍から王の近くへと近づいて行った。そして、王の視界に立つ。

「王位つげる皇子は二人しかおらぬ。そのうちの一人を、今ここで、見知らぬ者へ取られ、今二人目も、くれてやるようなことはできぬ」

「ならば誰かをやりましょう。同じ方法でなら」

と第一皇子が告げると、王は視線を上げた。第一皇子の真後ろに、サテンが立って、王を見下ろしていた。

「誰の時でも、止めたり動かせたりできるのか?」

「私が傍にいればできる。いなければ無理だな。しかし」

とサテンが続けようとすると、王は杖でテーブルの端を強く叩いた。強引だった。

「しかしはいらぬ。できぬなら無用の術よ。使えぬな。ならば、皇子とともに、おまえも議会の間へ行くがいい。あれほど大勢の人間がいれば、いくら、不思議な力があろうと、この皇子に何かできるとは思えぬからな」

と告げた。サテンは王を見下ろしたまま、

「私がついて行って良いのか?」

と穏やかに聞いた。王は苦い顔で、

「わしに同じことを二度も云わせる気か?」

「確認しているのだ」

「よいと言えば良い!」

サテンはさらに、尋ねる。

「たった二人しかいない皇子のうちの、大事な一人ではないのか?」

「議会の守備は万全じゃわい。あそこは、大臣も行けば、わしも行く、重要な場所だ。その手配はしっかりしてある。そうそう、何かできるものではないわ!」

「どうしても行けと言うのか」

「したいことをして、したいようにできると言うなら、さっさと実行すれば良い! それだけの力があるのだろうが!」

とヒステリックに叫んだ。王の言葉はどこかちぐはぐでおかしかった。サテンはそれを汲んで話しているように見えた。サテンはため息をついて告げた。

「王よ、誰も、他の者の意思を曲げて何かすることなぞ出来ぬ。おまえが王であろうが、私が何者であろうが、無理なものは無理だ」

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