表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 子龍
81/128

子龍-008 一つ一つ可能性をつぶしているように見えた

バイローンは視点を合わせようとした。


しかし、顎を引いて横たわる足元を見ようとして、悲鳴を飲み込んだようなうめき声をあげた。身じろぎ一つできなかったようだ。アントラックはそれを眺めながら、

「そうしたら、お前はたんまり謝礼を貰って、メローに子を産ませることになっているのか。取引をしてここに来たのか」

そう言った後、首を左右に振った。「違うな」と口の中でつぶやいて、さらに、

「目的は? サテン・チェシェ、おまえがここに来た目的は?」

と聞いた。

「わざわざ、このバイローンを助ける為に、ララルーアの龍としてやってきたのか?」

と言って見て、さらに首を左右に振った。サテンの顔を見ながら、一つ一つ可能性をつぶしているように見えた。ピクリとも動かないサテンの表情を見ながら、

「時が止められるならば、わざわざララルーアの龍になる必要もない。なら、なぜ、わざわざララルーアの龍になる。人と会うためか? 誰と会って何をする? このバイローンか? 助け出さなければ何もできない、今だって何もできないこの男か?」

と言った後、腕を組んだ。

「違うな。この男を置いて離れようとしていたな」

と言った。サテンがバイローンを置いて出ようとしていたことに気づいていたらしい。アントラックは、

「この部屋に連れて来て、置いていく。罪があるなら牢へ戻されかもしれない。しかし、第一皇子に釈明できる機会を与えた。無実のものなら助かるだろう。第一皇子ならば助けるはずだ、と。その為に第一皇子の宮へ来たのか?」

と言って頷いた。そうだろう、と納得した顔だった。そして、

「なら、どこへ行く? ここを出て、お前はどこへ行こうとしたんだ?」

サテンは答えなかった。サテンは視線は森の方へ向けた。太陽を額に浴びて、気持よさそうな顔をしてた、青空が気になって仕方がない、という表情をしてみせた。それは、おまえには関係がない、と言う動きに見えた。そのせいか、話し始めたサテンの言葉は淡々としていた。

「第一皇子はカエランラに見放された。王が、第一皇子には『王の資格がない』と判断を下したのだろう。おかげで、打って変わって、第五皇子が担ぎ出された。龍が呼ばれて、王の血筋だと持ち上げて、龍の子だと、第五皇子に箔をつけた。他に何もない子供だからな。何か外から付け加えたかったのだろう」

そう言って、視線を部屋の中に戻した。

「第五皇子は人の子だ。龍がこの世にいると信じているだけの人の子だ。龍のような不思議な力がある人間が、背後にいれば、カエランラ家が執政官として王国は収まって行く。その為に呼ばれた龍だ。もどきでも良い。偽バイローンが龍だと言うならそれもよかろう。王国はそれなりに様になる。龍、龍と、歌っているが、人の思いはそんなものだ。それ故に、第一皇子は無用の存在。が、そうも思わぬものもいる。第一皇子こそが王だと。だからこそ、第一皇子が邪魔だと思うやからもいる。政争が大きくなるな」

第一皇子は椅子から立ち上がる。蒼白な顔をしていたのだが、その皇子に向かって、サテンは優しい瞳で話かけた。

「一緒に行かぬか? おまえの伴侶を探さねばならぬ」

「王陛下は、私に資格がないとおっしゃったりはしておられぬ」

第一皇子は大きく堅い声で告げた。

「しかし、態度で示している。嫌がらせを受けているのではあるまいか」

「試練を頂戴しているだけだ。あの程度。あれを嫌がらせと思うような人間に王位は勤まらぬ、という意味だ」

「健気だな」

「我が伴侶は、ミラーナだ! おまえはすぐに忘れてしまうようだが、私には婚約者がいる、ミラーナだ!」

「人間だ」

「もちろんだ。龍はこの世に存在しない。おまえは、王家の血筋の者を野に連れ出して、見世物にでもしようと言うのか?」

「見世物の龍になるには、もうちょっと成長してからでなければ」

と目をすがめて言う。すると、第一皇子の顔は表情が消え失せて、

「出て行け。出て行くがいい! おまえがここで語らう理由は何だ? 私を連れ出すためだとでも言うのか? ララルーア殿は、私を連れ出せと言ったのか? そこまで脅されているのか? それなら、龍だと証明して、ペルシール地方をララルーア殿から取り上げれば良い。領主になれば、いかようにもできよう!」

サテンは軽く頷いた。そして言った。

「良く分かった。『おまえは龍だ』という言葉を信じたがる者はいない、ということが分かった。それだけが成果だが、何もないよりましと言うもの」

サテンは感情の消えた声で言った。皮肉な響きもなければ、憂いもない。音だけが響く、そんな声で話した。そして、身をひるがえすと、大きなガラス窓の脇にある出口に向かう。そして、ふと思いついたように振り返る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ