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龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 王宮
29/128

王宮-004 馬車を入口につけるように命じた

ララルーアは微笑を浮かべる。やらなければならないことはまだまだある。手詰まりだと思っていたことが動き出した。カエランラが騒いでくれたおかげで、何の策略をほどこすこともなく、サテンを陛下に合わせることができる。もっとも難しいと思っていたことが、労せずしてできるのだから。


ララルーアはにこやかに、戻ってきた時とは比べ物にならないほど落ち着いた様子で、馬車を入口につけるように命じた。サテンは考え深い目で、そんなララルーアを見下ろしていた。


馬車に二人が乗ると、御者は、軽やかに長い鞭を振るった。月が昇り始めていた。二人の乗った馬車が、林の中を駆けて行く。バウンは宮の入口に立ち、馬車が林の中から森の中へと見えなくなるまで見送って、踵を返して宮の中へ戻って行った。


林の中の回廊を、馬車は音高く駆け抜ける。森の中に入ると音がこもり、蛇行する道の向こうに、光あふれる白い王宮が現れた。巨大な岩山だった。


入口が刳り抜かれ、玄関口には半円形の広場が見えた。馬車が並び、人を乗せ、降ろしては、離れていく。車寄せの庇の下から、中へと続く強大な石段が見えた。


石段の手前では、お仕着せを着た男達が行きかう。馬車から下りた客人達を次から次へとさばいて行く。男達の案内で、人々は岩山の中へ吸い込まれるように石段を上がって行く。中は、ランプの白い光にあふれ、交差した階段で上る三階層の吹き抜けがある。


一階には広大な広間があった。上層には、吹き抜けを見下ろす回廊があり、人々が行きかっている。回廊の奥にはいくつもの空間があって、それぞれ、きらびやかな衝立で区切られていて、貴人の小部屋に仕立てられている。遠目にもくつろぐ姿がちらほら見えた。


ララルーアは、馬車から、お仕着せの男達が出した足置き台を踏んで上品につま先から下りた。

「お帰りなさいませ。ホッセン伯爵夫人」

それが、ララルーアの正式呼称だった。ララルーアは彼らの笑顔には見向きもしない。挨拶に会釈一つ返さなかった。それどころか、

「わらわの客人を」

と言う高圧的な命令調の言葉を言うだけだった。それでも、男は丁寧に会釈をして、

「承りました」

と答える。微笑は顔に張り付いたまま変わらない。


ララルーアは、足起き台を置いた男とは別の案内の男に導かれて、王宮の階段を上がって行く。ララルーアの次にサテンが降りる。お仕着せの男の会釈を受けて降り立つと、ララルーアは、光の中に溶け込むように人々の中に消えていくところだった。


「案内の者か? どこへ行けばよい?」

サテンのぶっきらぼうな言い方に、言われた男は顔色一つ変えなかった。そして、ララルーアにしたのと同じように丁寧な会釈をして、

「御客の間へご案内いたします」

と答えたのだった。


それが、何種類もある階級にそって存在する複数の客間の一つで、中でも最下層の客間に案内されることになったのだが、サテンには分からなかった。後で知ったララルーアは自分が侮辱されたと言って激怒したのだが、サテンにとってはどうでもよかった。静かに耳を澄ませる場所があれば十分で、石ばかりのこの建物の造りは、正直辟易した気分になった。おかげで、逆に、いい場所へ部屋を割り当てられたものだと言った。実際、一階の庭に面した、静かな寛げる部屋だった。


サテンは、岩山の玄関口から、お仕着せの男に案内されて、一階の広間を歩いた。頭上の吹き抜けはどこまでも高く、上階の人々の声がこだまして不思議な音の波が聞こえた。最下層といえども、広間には華やかな巨大な花の鉢が柱を起点に無数におかれ、華やかだった。顔が映りそうな美しいタイルの床に、夜だと言うのに淡い光が照らす広間は、まるで昼の美しい中庭にいるようだった。

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