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龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 王都
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王都-010 本をデスクに置いて、慌てて回廊のテラスに出た

どのくらい立っただろうか。遠くで音がして、バウンはララルーア達が予定よりも早く帰って来たのだと思った。古い資料の埃をとって、背表紙の痛んだものは、のりと皮の端切れで補修をしていたのだが、本をデスクに置いて、慌てて回廊のテラスに出た。


音が大きくなった。布がすれ合うような音だ。バウンは異様な感じがして、テラスから下を覗き込んだ。


すると、一瞬、何か青みがかった銀色の物が視界いっぱいに広がって、庭を見ていると言うのに、足もとから四方へ、それこそ街の外まで広がっているような気がした。自分が銀色の海の中で、「おぼれる!」と慌ててテラスの手すりに手を伸ばした。そこで、白昼夢は終わる。


気付くと、手すりにすがりついて片膝をついていた。手が震えている。何だったんだとタイルを見た。ほおをなでる風は冷たく、夕暮時を告げていた。ゆっくりと立ち上がって下を見下ろすと、サテンの脇にララルーアが立っていて、何かをヒステリックに叫んでいた。


バウンは膝を払い、袖を整え上着を伸ばすと、大股で一歩動いた。どうにか、自信が戻ってきた。おぼれそうな一瞬の波の記憶の脇へ追いやり、二歩目をを踏んだ。と、その時には、いつもの自分に戻っていた。回廊から階段を足早に下りだした時には、銀色の波のことなど、後で調べるべき問題と言う棚にしまいこんで、すっかり、目の前にある、女主のヒステリーと言う問題に集中していたのだった。


玄関の正面の階段を下り、回廊を回って、中庭へと降りようとしたところで、女主人のヒステリーは絶頂を迎えた。

「今すぐ支度をなさい! あなたの怠惰なせいで、三歩も遅れをとったのよ! 村が大事だったら、服を着て、王宮へ来なさい」

と怒鳴り散らしていた。


第五皇子は、龍の話をする新しい付き人にすっかり気持ちを許していたらしい。カエランラが見つけてきたと言う龍だ。これこそが龍の偉大さだとか、龍の魔法だとか、王宮はその話題でもちきりだったそうだ。


ともに帰宅したマゼラッセ男爵が不服そうに言っていた。初めは馬鹿にして噂を打ち消していたララルーアも、実際に第五皇子の脇に座って穏やかに話しかける男の姿を見て来たらしい。


「サテン。いい?! 子供を懐かせる方法を考えるのよ。村で子供を扱っていたことがあるでしょう? 田舎臭くっても構わないわ。洗練された男が傍にいるんですもの。猿まねなんかはすぐばれるわ。あんたは村でやっていたように、あんたのやり方で子供の心をつかむのよ。周囲の人間なんか相手にしなくていいわ。どうせ、相手にしようとしたって、あんたにはできないんだから。子供よ。第五皇子の心を掴みなさい。これは命令よ!」

と息も継がずに言ったのだった。そして、にこりともせずに言い足した。

「村の援助を止めたくないなら従いなさい」

「村のために。仰せのままに従いましょう」

サテンは気のない声で言った。


寝椅子から片足を落として、クッションに腕をかける。見上げる目は眠気に襲われ、内容をよく把握していないようにも見えた。しかし、ララルーアが再びヒステリックな声を再び出す前に、両足を床について、あくびをかみ殺して聞いた。

「で? その第五皇子と言うのは、何と言う名だ?」

「ハイレルート・アヤノ・オオノ皇子殿下よ。ながったらしくて、そんな名で呼ぶものはいないわ」

「長いのか? その程度で?」

と言ってから、サテンは伸びをして、クッションにもたれた。

「アヤノ皇子か。よい名だ。気に入った」

と言って目を閉じた。どこか謎めいた表情を浮かべた。思わず見とれる表情をした。が、しかし、ララルーアのヒステリーを止めるほどではなかった。

「バウン! サテンの支度をはじめなさい。今すぐ出れるように着飾るのよ! いい? 今すぐよ」

と叫びだすのだった。眠りこんだ男を無視し、今度はバウンにあたり散らしだした。

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