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最強パーティの専属荷運び人  作者: 智慧砂猫


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第8話 新しい仲間

 クローディア・セクエンスは騎士だ。ただし、根暗だ。決して世に見る豪快さもなければ、盾役としても、前衛としても性格に頼りない娘である。歳は22歳と若く、レアナとそう変わらない。だが非常に根暗なのだ。


「我輩は殻を被って自分を偽っているにすぎないのである。冒険者になって最初はパーティにも所属したが、どこにも馴染めず、結局ソロになってしまった」


 大きな問題は仲間が彼女をまるで姫のように扱ったことだ。


 クローディアの美貌は知れた通りで、元々は甲冑に身を包んでもいなかった。それがあらゆるパーティを崩壊させる原因にもなったり、彼女自身を根暗に変えていく理由にもなった。美しさが罪となってしまった稀有な類の話である。


 美しいがゆえに惚れるのは必然だ。冒険者の七割か八割は男性で、数少ない女性の冒険者であったクローディアは、どこのパーティからも勧誘を受けた。


 その後が大変だった。姫として扱われると戦闘にはほぼ参加させてもらえず、傷が付いたら困るとまで言われた。男たちは彼女にすり寄り、いつでも気を遣ってなんでも与えた。そのせいか、自分は頼りにされているのではなく置物として扱われているのだと感じて、次第に塞ぎ込むようになっていった。


 剣を握った瞬間から冒険者となって最強の騎士の称号を得るのが夢だった。そんなタイプではないだろうと何度も言われてきたし、凛とした顔立ちは気の強さを周囲に思わせてしまい、明るい人間ばかりが集まった。


 だが、元々クローディアは内気だ。馴染むことができないうえに、彼女に必要のない好意を抱く者ばかりでうんざりし始め、自分は誰にも必要とされない、彼らが見るのは自分たちの欲望のためであると冒険者をやめようと思った。


 その翌日だった。ギルドでパーティメンバー募集の張り紙を見たのは。


「貴殿らが銀級以上を求めていると聞いて、我輩は希望を抱いた。腕に関係なく味方求める白金級の実力者。ここなら我輩を贔屓にせず、真に見てくれると。……いやまあ、冷静に考えて、そのくせ荷運び人を格落ちと見るなど我輩も底が知れていたと今は痛感するばかりだ。まことに申し訳ない、ひどく浅はかであった」


 家に招き入れられた風変りな騎士は、ただ平謝りをするばかりだ。シレントが荷運び人だと分かると侮り、取り合うべきはレアナの方と断じてしまった。どれほどの無礼であったかを猛省して、深く頭を下げた。


「いやいや、おじさんは気にしてないからね。世の中の荷運び人の評価なんて知れてるとは僕自身も考えてることだ。でも、次からは気を付けようね。他の人は嫌な気持ちになるだろう?」


 レアナが相棒を貶されたと不快に感じたように、荷運び人本人だけでなく、その周りにいる人間まで傷つけてしまいかねないクローディアの言動は直すべきものだ。放っておけば、そのつもりはなくとも、ふいに差別をする癖がついてしまう。


 シレントに注意を受けると、しょんぼりした顔で指先をつんつん合わせた。


「かたじけない、シレント殿……。して、ひとつ伺いを立てたい。我輩は、貴殿らのパーティに加えて頂けるのであろうか。無礼を承知で頼みたいのだ」


 懇願する声に、シレントはレアナを見た。

 パーティのリーダーである以上、決定権は彼女にある。


「あ~、そうだな。とりあえず色々と聞きたいんだが。まず階級は?」

「白金の二つ星である。言っても飾りだ、相応しい腕がない」

「……ま、あながち嘘の実力ってわけでもなさそうだが」


 戦う人間というのは、対面したときに相手の実力を大体は見極められる。クローディアは本人の根暗ぶりといい、これまでの経緯といい、決して強そうには思えないが、きちんと実力をつけて冒険者を続けている。


 それゆえに、レアナはシレントの方が気になった。


(ただの荷運び人じゃないとは思ってたが、仮にも白金級の実力者相手に剣も抜かせないってのは……少なくとも私と同じくらいは強いのか?)


 銀級と聞いていたので、シレントに合わせて低級の依頼を受けるつもりだったが、これはぜひとも金級以上のダンジョンに探索へ行きたいと熱が増す。


「どうするんだい、レアナ?」

「あっ……あぁ、そうだな。別に私は構わねえよ」

「本当であるか! 我輩の印象は最悪だったろうに、なんとありがたい!」

「印象のすれ違いなんてよくあることだろ。今後に期待させてもらうさ」


 荷運び人に対する理解などないのが常の中で、クローディアは自分が間違っていたと認識を改めて謝罪した。当たり前のことだがそれが難しいもので、悪態を吐いて自分は悪くないと吠える人間は多い。謝れたという事実があれば十分だ。


「じゃあシレント、出発の準備頼むわ」

「もう荷物はバッグに入ってる。いつでもいけるよ」


 家の片づけに追われていても準備は怠らない。魔法は使えないので、ギルドで買った傷薬や包帯。町では食べ物などを仕入れて、全てをボンサックの中に詰めていた。冒険に出るとなれば、白金級でも無傷で済まない場所はいくらでもある。念には念を入れておいた。その分、かなり重くはなったが。


「それで、どこのダンジョンに行く予定だい?」

「海の遺跡。遠いからワープポータルで近くまで飛ぼうぜ」


 急げ急げと庭先へ出た。レアナの家の広大な庭に設置されたワープポータルを使って、各地の連携したワープポータルに飛び、近くのダンジョンまで探索に行ける。本来であればギルドに探索申請を済ませて記録を取らねばならないが、レアナの敷地にあるものは自動的に情報が送られる仕組みなので、寄る理由もない。


「随分とまた立派なものがあるのだな、貴殿らの拠点には。これ、設置するのも数百万はするであろう? 設置するスペースも広く取られるし……」


「コイツはギルドに借金して造った。当てがありゃ貸してくれるからよ」


 白金級なら一度の稼ぎで数十万は叩き出す。それだけ貴重な素材を手に入れられるため、竜でも討伐しようものなら総額で数千万にはなる。レアナは金級の頃から倒せる限界の魔物ばかりを狙って、コツコツと稼いできたのだ。


「これからは仲間なんだ、自由に使えよ。私らが探索にでないときでも、行きたきゃ個人でどこへでも行っていい。シレント、あんたもだぜ?」


 魅力的な話だ。普通の冒険者であれば。


「ハハハ、ありがとう。でもおじさん、荷運び人だからね。パーティ専属だから行く理由ないんだ。誰かの荷物を運んでる方が落ち着くからさ」


「ほーん……。ま、いいや。そんなら今日はよろしく頼むぜ、二人とも」

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