↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強パーティの専属荷運び人  作者: 智慧砂猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/40

第26話 話し合い

 誤解はあったが、レアナが嫌がったので朝食を済ませてから帰ることになった。なんとも落ち着かない気分だが、それはそれとして。


「そういえば、レアナ。さっきクローディアが言ってたんだけど……」


 パーティに招待された件を伝えてみると、食事のときに気分の悪い話をしやがって、と眉間にしわを寄せた。


「────めんどくせえ。無断欠席でいいだろ、別に」

「いやでもさ。問題が起きてからだと余計な面倒に巻き込まれるかも」


 白金級の冒険者たちは他にもいる。といっても片手に数えられる程度だが、十分に危険だ。ましてやギルドに登録していないだけで、レオのように飛び抜けた実力を持つ者もいるのだ。自分たちが無事で済むかどうかは怪しい。


「つっても、そのパーティっていつだよ?」


「詳しい話は帰ってから聞かないと。でも、明日か明後日には確か皇太子の生誕記念パーティがあるだろ。ちょうど、そのときに呼ばれるんじゃないかな」


 毎年の恒例行事である都市をあげての生誕祭。その直前に、貴族たちが揃って皇太子を直接祝うパーティ。直近ならそこしかないとシレントが言う。


「んで、なんだよ。連中が上手く逃げられる口実を作る手伝いをしろってか。市民を見捨てて、自分たちは生き残る腹積もりなんだろ?」


 図星すぎて、んぐ、とシレントも言葉に詰まって苦笑いが漏れた。


「クローディアも言っていたが、これは僕らにとって損はないと思う。魔族……ゼロたちと関わる以上、彼らの支援を求めるのは悪くない話だ」


「そりゃ応じればの理屈だ。連中が義理堅く従うとでも思ってんのか」


 フォークをくるくると回してパスタを巻きあげながら、呆れた息を吐く。


「荷運びばっかりしてきて女のひとりも口説けない奴が、あの薄汚い連中に口の上手さで勝てるってんなら反対もしねえが」


「痛いところをつかないでくれ……」


 思わず飲んでいた水を噴き出しそうになり、軽く咳き込む。


「にしても、どうしてそんなに嫌がるんだ?」


 あまり詮索をされたくなかったレアナが、物憂げな表情を浮かべた。


「悪ぃが今は踏み込まんでくれ。そのうち話すからさ」

「あ……ごめん。気が利かなかった」

「いいさ。それよりさっさと食べちまおう、クローディアたちが待ってる」


 それから、二人はこれといって会話もなく静かに食事を続けた。

 帰り道でさえ気まずいくらいの無言で、揃ってわざと視線を逸らす。

 家が見えてくると、シレントはやっと安心して表情が緩んだ。


「ム、ようやく戻ったな。遅いではないか」


 会話する距離が、露骨に数人分は開いている。バイザーの向こう側から感じる、汚物を見る視線にシレントはどう誤解を解いたらいいか分からなかった。


「おう、全員揃ってんな」


 ルルもシャーロットも、既にパーティの件について話し合うために待機している。しかし、そんな光景を見てレアナは少し表情が引き攣った。


「あのよ……。広いのは分かるんだが、庭先で話し合いをするパーティってのもどうなんだ。そりゃ家ん中は改築中で入れねえけどさ」


「気にしては疲れるだけである」


 腰に手を当てて胸を張り、クローディアは堂々と言ってのけた。


「それにあれだぞ、本当に聞かれたくないときは我輩とて場所は考える。これはどちらでもよい話だ。貴殿らほど秘密を共有する不純さはない」


「テメーはあれか、もしかして私に喧嘩売ってんのか?」


 途端に空気が黒く淀み始めて、戸惑うシレントが助けを求めるような視線をルルたちに向けると、仕方なさそうにシャーロットが割って入った。


「喧嘩をしている場合ではありませんわ、お二人とも。クローディア様も、なぜそうまで突っかかるのかは分かりませんが、それは今すべきことですか?」


「ウ、ム……。それは違うが……」


 反省を促されて返す言葉のないクローディアを見て、レアナもがりがりと頭を掻きながら「本題じゃなかったな」とブレていた軸を元に戻す。


 皆が落ち着いたところで、シャーロットが中心になって本題が始まった。


「今回のパーティ招待は、わたくしたちにとって難しい問題です。おおよそ出席すべきで話は纏まっていますが、レアナ様は違うのでしょう」


「よくわかったな、お前。読心術でも心得があるのか?」


 茶化されても、くすっと笑ってクローディアは穏やかに返す。


「面倒くさいと顔に書いてありますわ。ですが我々も今のままでは、おそらくそのゼロという魔族に太刀打ちはできないはず。ダンジョンから解き放たれる前に決着をつけなくてはなりません。そのために国の援助も欲しいのが正直なところです。貴族を敵に回せば、余計な刺客まで差し向けられかねませんし……」


 シャーロットの不安に、ルルも小さく手をあげて言葉を続けた。


「アタシもシャーロットに賛成。多分、みんなゼロを直接見たことがないから、白金級の冒険者とか闘技場の上位闘士がいれば勝てると思ってるはずよ。余計な騒ぎを起こしかねない信用のないアタシたちを排除しようとしても不思議じゃない」


 全員が同じ意見を口にするのを聞けば、さすがにレアナとて揺らぐ。


 貴族に関わればろくなことがない。彼らの仕事を請け負うのは無理だと思っていても、逃げ道を塞がれた今、選択肢はひとつだけだ。


「……わかったから、こっち見んな。行きゃいいんだろ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。