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あのゲームでのモラーハルトとミリヨンの出会いは入学式当日。


モラーハルトが婚約者であるマリアンヌを嫌々ながらもエスコートして正門をくぐった瞬間。

後ろから走ってきたミリヨンが『たいへ~ん!遅刻遅刻~☆』と叫びながら二人の前で盛大にすっ転ぶのだ。

『君、大丈夫かい?』

モラーハルトがミリヨンを優しく助け起こしたその瞬間二人は恋に落ちる、というのがモラーハルトルートの初イベント。


本当に安っぽいクソゲーですわね。




そして今まさに、モラーハルト殿下とわたくしが正門をくぐった瞬間。


「たいへ~ん!遅刻遅刻~☆」

ゲームそのまんまのセリフとともにピンクの髪を振り乱したミリヨンがヘッドスライディングをかましてくれましたわ。


ほらね、やっぱりモラーハルト狙い。


「君、大丈夫かい?」

これまたゲームそのまんまのセリフでミリヨンを助け起こすモラーハルト殿下。


わたくしの頭の中で

パッパラッパ~パパーラ~♪

という間抜けな効果音が聞こえた気がしましたわ。


見つめ合う二人にはわたくしのことも、周りにいる大勢の新入生のことも、もう何も見えていない。

完全に二人の世界に入り込んでしまいましたわね。


ええ、ええ、よろしくってよ?

あなたたち、化け物同士とってもお似合いですもの!


「い、痛ーい!!ぐすっ」

「僕はこの令嬢を医務室に連れて行く!マリアンヌ、貴様は一人で勝手に講堂に行け!」


わたくし、何もしておりませんのに。

何故にそのよう睨み付け、威圧的な態度で大声を出されるのか意味が分かりませんわ?


頭を何か悪い病魔に侵されているのでしょう。


「承知いたしました。わたくしはこのあと新入生代表の挨拶の打ち合わせがございますから、どのみちご一緒は出来ませんもの」


「はん!僕よりもちょっとばかし新入試験の成績が良かったからといって、それをひけらかすその態度!僕は貴様のそういうところが昔から大嫌いなんだ!!」


嫌いなのはお互い様ですので構いませんが。


新入試験の成績、わたくしは首席で貴方は下から5番目でしたわよね?


頭が悪すぎて『ちょっとばかし』の意味すらお解りにならないのかしら?


本当に頭が病気の方と会話をするのは疲れますわ。


「あら、そのようなつもりは毛頭ございませんが。そのように感じられたなら、それは申し訳ございません」


「ふん!!」


モラーハルトは丸見えの鼻の穴から勢いよく鼻息を吹いたあと、ミリヨンを横抱きにして医務室の方へ歩いて行った。

かなりヨタヨタしてますけど‥‥大丈夫かしら?

もう少し体幹を鍛えた方がよろしいのでは??


婚約者であるわたくしに暴言を吐き、貴様呼ばわりした挙げ句、放っぽって違う令嬢を庇って抱き上げるなんて周りにいる沢山の新入生たちが驚いているではありませんか。

そういう直情的な性格はいずれ身を滅ぼしますわよ?


小さくため息をついて踵を返し、講堂に向かおうとしたその瞬間、ふわりと甘いチョコレートの香りが漂った。


デ、デメルフリード様!?

デメルフリードが学園にいらしてるの?!

いつもながら認識阻害魔法でお姿は見えませんがこの香りはデメルフリード様ですわ!!


「おわわ!!」

「ギャッ!!」


モラーハルトがミリヨンをお姫様抱っこしたまま、盛大にすっ転んだ。


「ぐえぇぇ」


ミリヨンがモラーハルトに潰されてますわ!


おーっほっほっほっ!!いい気味ですわ!

と盛大に笑ってやりたいところですが、ここは我慢!ですわ。


「殿下、大丈夫ですか?」

「う、うるさい!!貴様はとっとと行け!」


モラーハルトはべちゃべちゃに脂ぎった髪をむちむちの指で掻き上げながら叫んだ。


おいおい、その前にミリヨンの上からどいてあげなよ。

自分の体型を解ってらっしゃないの?

彼女、もう白目をむいて虫の息ですわよ。





デメルフリード様、いつもありがとうございます‥‥


わたくしは心の中でお礼を言って、今度こそ講堂に向かって歩いた。




そう、デメルフリード様は時々こうやってわたくしを庇うようにモラーハルトに小さな嫌がらせをしてくださる。


モラーハルトがわたくしにモラハラをかます度に、


『おわっ!』

何もないところで躓いたり(足引っかけ?)


『あいたっ!』

おでこを押さえてキョロキョロしたり(デコピンかな?)


『ぶほっ!』

盛大にお茶を吹きだしたり(後頭部を勢いよく叩いたのだと思われる)


そういうことがよくあるのですわ。

その時は必ずチョコレートの甘い香りが漂ってますの。


今もきっとデメルフリード様がモラーハルトの足を引っかけたに違いありませんわ。


デメルフリード様はわたくしの味方!

少なからずわたくしに好意を持って下さっている?

もしくは見目の良い(笑)腹違いの弟が嫌いなだけかも知れませんわね。

敵の敵は味方!みたいな?


どちらにしてもデメルフリード様が近くで見ていて、庇ってくれる。

たとえお姿が見えなくても、それだけでわたくしはこの辛い日々を耐える事が出来るのですわ!


大好きです、デメルフリード様!

なんとしてもあと一年でこの下らないクソゲーを終わらせて、貴方を手に入れて見せます!!


だからどうか、その時は貴方もわたくしを好きになってくださいませね?






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