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再び目覚めてから3日後。
わたくしは自室で暖かい紅茶を頂きながら
「はぁぁぁー」
と、深いため息を吐いていた。
そう、何を隠そうこの世界、乙女ゲーの世界にして美醜逆転の世界だったのですわ!
千年に一人の美姫、薔薇の妖精、などと賞賛されるこのわたくし。
‥‥それなのに鏡に写るわたくしはどう見てもカエルの化け物なのですわ!!
しかもべっとりと湿ったきみどり色の髪。
それは前世で雨上がりに見かけたアマガエルそのもの!
それでも北のガゼボで『チョコレートの君』に出会うまでは、鏡に写る自分を見つめて
『ああ、わたくしったら今日も本当に美しいですわ~』
なんて思ってましたのよ?
ん?てことは、美醜逆転世界というより、わたくしの美貌感覚が狂っただけ?
いやいや、そんなことはない!断じてない!
『チョコレートの君』のご尊顔を思い出す。
サラッサラの金髪。
整った眉毛。
幅広の二重なのにすっきりとした涼しげな瞳は透き通るようなスカイブルー。
高くてスッと通った鼻筋。
意志の強そうな、誠実そうな薄い唇。
どう見ても彼が、彼こそが絶世の美少年じゃろがい、ですわ!
前世のテレビで見た芸能人よりも、ハリウッドスターよりも断然美しい。
まるで美の化身。
なのに最初に彼を見た時のわたくしは
「なんて醜いのかしら」
と、吐き気すらもよおしましたのよ。
これはもう、彼の圧倒的な美しさに当てられて前世を思い出し、美醜感覚が正常に?戻ったとしか思えませんわ。
彼に会いたい‥‥
彼と結ばれたい‥‥
むしろ彼以外はノーセンキュー。
何しろわたくしは前世から自他共に認める面食いなのですから!
婚約者であるモラーハルト殿下の顔を思い出す。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
うん、アレはないわ、無理ですわ。
アレはわたくしと同じカエルの化け物。
くすんだような鉛色のベチャ髪に、ベッタリと絵の具を垂らしたような青い目ん玉はでっかくて飛び出している。
鼻筋は何処?ってか、鼻の穴が見えてましてよ?
そして分厚くて大きな口。
アレはまさしくガマガエル。
無理無理無理無理、無理目の無理!!
アレと結婚して夫婦になって、あんな事やこんな事するなんて、絶対無理!!
いくらわたくし自身がアマガエルでも、ガマガエルは無理!!
何としても婚約破棄をして貰わなければ!
こ、こんな時、数多の主人公たちはどんな対応をしていたかしら?!
前世で読み漁った異世界モノ小説の記憶を必死で辿る。
その1、我が儘令嬢を返上して品行方正に振る舞う。
その2、素直に婚約破棄して欲しいとお願いする。
その3、ヒロインとお友達になる。
その4、記憶喪失の振りをする。
その5、ポンコツアップデート
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
ぎ、逆に溺愛モードに入る予感しかしませんわ。
うわーん!やだやだ!
あんな化け物に溺愛されるなんてイヤ!
お膝に乗せられてスイーツあ~んとか、死んでもイヤ、無理、ノー!!!
とにかく、わたくしはなんとしてでも婚約破棄をして貰い、美の化身であらせられるチョコレートの君と結ばれたいのですわ!!!
って‥‥そうよ、乙女ゲーのシナリオ通りに断罪されて婚約破棄されればいいのよ!
その後は首チョンパされないように上手く逃げれば無問題!
今のわたくしはまだ10歳。
ゲームの開始は学園に入学する15歳から。
例の断罪劇は更に3年後の学園の卒業パーティー。
つまり、あと8年もある!
それだけあれば、色々と逃げるための計画を練ることも出来ますわ!
幸いなことにこの世界には魔法というモノがある!!
これから必死で努力して魔法を極めれば何とでもなるんではなくって??
今は婚約者であるモラーハルト殿下と付かず離れず、無難に過ごしながら魔法を極める、これ一択!!
よし!
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それにしてもこの世界。
程度の差はあれど右を見ても左を見ても化け物だらけだ。
カエルの化け物に、犬のパグの化け物、猫のエキゾチックショートヘアーの化け物、深海魚の化け物。
とにかく飛び出した目ん玉と鼻ぺちゃ、そして体型はデブ寄りのデブがこの世界の美人らしい。
そりゃぁね、パグもエキゾチックショートヘアーも可愛いわよ?
前世の私はテレビにそれらが映る度、
『きゃ~ぶちゃかわ犬サイコーに可愛い!』
『おデブ犬もおデブ猫もきゃわわ~』
なんて思っていたもの。
小学生の頃はケロッピの下敷きとか使ってたし、提灯あんこうのキャラクターも結構好きだった。
だけどね、いくら動物やキャラとしては可愛らしくとも、そのまま擬人化すりゃあもう気持ち悪いのなんのって。
前世の美醜感覚を取り戻したわたくしにとって恐怖以外の何物でも無いわ!!!
これはもう面食いとかそういう次元ではなくってよ?!
‥‥癒やしが欲しい。
鏡に映る自分にさえ、そのキモさに叫び出しそうになるんですのよ!
もう、何度鏡をたたき割ってやろうと思ったことか‥‥
ああ、チョコレートの君に会いたいですわ。
あの美しいご尊顔に癒やされたい。
まぁ、彼の場合は癒やしと言うよりも、美しすぎて逆に叫び出してしまいそうですけれどね。
もうこの際美人を見たいなんて贅沢は言わない。
普通の人間が見たい。
どこにでもいる平均的な見た目の人間を見たい‥‥なんてささやかな願いを持つのは決して贅沢な事ではないと思いますのよ‥‥。




