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入学してから一週間。

わたくしにはお友達が出来ない。

最初の3日くらいはあれやこれやと話しかけてくる者も結構いたのですけれどね。


そんなわたくしに反してミリヨンは凄まじい勢いで『お友達』を増やしていますわ。


モラーハルト殿下をはじめ、この学園のイケメン達(笑)を魅了の魔法で落としまくり、今や一大ハーレムを築きつつある。


モラーハルトの腕にベッタリと引っ付いて、その周りを沢山の男子生徒に取り囲まれて廊下を闊歩する光景は、ある意味圧巻。


そしてモラーハルトと二人して、周りの生徒達にわたくしのあることないこと悪し様に語る。


ミリヨンの魅了魔法にかかっている男子生徒たちは勿論、女子生徒も巻き添えは御免とばかりにわたくしを避けるようになった。


こうしてたったの一週間でわたくしの周りには誰もいなくなったのですわ。



しかし、わたくしはそんなことは全然、全く、これっぽっちも気にしておりませんの。

わたくしはお友達と戯れるために学園に通っている訳ではございませんからね。


たった1年で3年分の全ての教科の単位を取得して卒業資格をもぎ取らなければなりませんもの。

遊んでいる暇はないのです!




そんなわたくしに最近ピーチクパーチクとうるさい小鳥が二羽、付きまとうようになりましたの。


侯爵家の令嬢と伯爵家の令嬢で、ゲームにも登場した悪役令嬢の取り巻きAとB。

この二人、口を開けば誰かの噂話や悪口ばかりで、もう声を聞くのもうんざりなのですわ。


わたくしがやんわりと避けていることに気付いているのかいないのか。

休み時間の度にわたくしのところへ来て大声で他人の噂や悪口を言いまくる。



「マリアンヌ様!あの噂、お聞きになりまして?」


はぁ、また始まった。うぜぇですわね。


「噂?何のことかしら?わたくしあまり噂話には興味がございませんの、ほほほ」


「まぁ!そうなんですの?でもこの噂はマリアンヌ様に関係がございますのよ?」


あー、はいはい。

どうせモラーハルトとミリヨンの事でしょう?


「実は、マリアンヌ様のご婚約者であらせられるモラーハルト殿下とドブール男爵令嬢が学園の裏庭で‥‥」


ほらね。

その話、最後まで聞かなければなりませんの?

全く、怠りぃですわね。


その時、廊下の向こう側にモラーハルトとミリヨンの影が見えた。

わーお!

お二人さん、なんて良いタイミングでしょう!

このタイミングを逃す手はありませんわ!!



「‥裏庭で、なんと口づけをかわしていたそうなのです!」


「あら、まぁ、下位貴族の令嬢と不埒に戯れるなんてモラーハルト殿下も困った方ですわね。そのドブール男爵令嬢も簡単に殿方に唇を許すなど‥‥いったいどういう貞操観念をお持ちなのかしら‥‥」


頬に手のひらを当てて、小さくため息をついて見せた。


廊下の影にいるモラーハルトとミリヨンはどんな顔をして聞いているのかしら。

まぁ、どんな顔でもいいですけどね。

どうせカエルと深海魚の化け物ですし。


さぁ、わたくしのこのセリフをどうぞ虐めと捉えて学園の皆様に広めて下さいな。



わたくしはどんなに嫌いな相手でも、嫌がらせや虐めをするなんてどうしても出来ませんの。

ゲームの中では、突き飛ばしたりドレスにワインを掛けたりと『大したことは無い』と思える嫌がらせでも、現実となるととても無理。

前世のわたくしは平凡で、平均的で、平和な優しい世界で生きておりましたからね。


どうせあの二人のことだから今のセリフを歪曲して大袈裟に広めて下さいますわ。


これからミリヨンを虐めなければいけないのか、と気分が重くなっていたわたくしにとって、これは素晴らしくラッキーなタイミングだった。


これでわたくしは自分の手を汚すことなく、ヒロインを虐める悪役令嬢という構図が出来上がりましたわ。


ふふふ、婚約破棄に向けての第一歩ですわ!


思わず笑いが込みあげそうになるのを隠すように下を向く。

それでもクスクスと笑いが込みあげてきて、わたくしの肩が小刻みに震えた。


あら、これではまるでわたくしが傷付いて泣いているようではありませんこと?


まぁ、周りの者にはどう思って頂いても構いませんわ。


どうせたったの一年でこの学園ともモラーハルトともおさらばするのですからね、ふふふ



その瞬間、ふわりとチョコレートの香りが漂った。


暖かい風がわたくしの周りに吹いて、頬を掠める。

大きな手のひらで髪を優しく撫でられる感覚がした。




ああ、デメルフリード様。

初めてわたくしにに触れて下さいましたのね。

慰めて下っているのですか?

わたくしの大好きな、美しく優しい方。



ねぇ、こんなことをされると、わたくし、勘違いしてしまいましてよ?


貴方も、もしかしてわたくしの事を‥‥なんて。


















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