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第9話 美琴 side おばあちゃん

『カーーーン・・・キーーーン・・・』


公園中に鳴り響く蝉の声に負けずに澄んだ音が広がる。

舞台を囲む客席に座ってその音を聴く。


人の気配を感じたのか、不意に舞台の人が振り返った。

風になびく髪を耳にかけながらこちらを向いたのは、俺とあまり変わらないくらいの女性だった。


ふり向いた時に目が合い、驚いた表情になる女性。

のぞき見がばれたような気がして思わず「すみません」と慌てて立ち上がって謝る。


(なんで謝ってんだ。俺)頭に手をやったまま、固まった女性を見る。


淡い色のワンピースで小麦色に日焼けした腕。肩までの伸びた髪を耳にかけてこちらを大きな目で見ていた女性は「私こそすみません。こんな時間に誰かいるなんて思ってなくて」と申し訳なさそうに笑いながら舞台から下りてきた。


「俺、中山健太って言います」と思わず名前を言ってしまった。

突然名前を言ってきた俺にびっくりした様子の女性。

笑いながら「私は山家美琴と言います。」と返してくれた。

これが俺と美琴さんの出会いだ。


【美琴side】

 私の名前は山家美琴。小さい時から音楽が好きでずっとピアノを習ってた。高校、大学と音楽の道に進み、卒業後は香川に帰って音楽教室の先生をしていた。父さんの飲み友達の大工さんが酔った勢いで「教室を家でやったらいいじゃないか」と言ったら、お父さんも流れで「そうだ、そうだ」となり、格安でリフォームをしてくれて、今では自宅でピアノ教室をしている。


両親ともに共働きで忙しく、小さい時は祖父母に良く面倒を見てもらっていた。

春になるとおばあちゃんが山にいろいろな山菜を取りに行くのに良く付いて行った。山に入っては「おばあちゃん見てー」と手のひらにウネウネと動くミミズを乗せて見せたり、夏には蝉取りやおじいちゃん秘伝の寄せエサでカブトムシを取りに行っていた。


(子どもの時ってなんで虫が平気なんだろ・・・)


大人になった今では見るのはまだよくても触るのは苦手だ。そんな美琴だが今でも大事に持っている物がある。


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