第10話 美琴 side2 サヌカイト
「おばあちゃん。今年も山菜取りに行くの?」と聞くのは小学校に入ったばかりの時の美琴。
「あぁ、行くよ。美琴ちゃんも一緒に行くかい?」と答えるのはやや腰が曲がってきたおばあちゃん。
「うん。行く!」と元気いっぱい答える美琴。
おばあちゃんと山に行っても山菜を採るのには直ぐ飽きてしまって、おばあちゃんの見える範囲で黒くなったドングリや変わった石を拾っていた。毎年一緒に行くたびに見つけては宝物にして、おばあちゃんが亡くなるまで増えていった。
(さすがに黒くなったドングリは何も見なかった事にして捨てたけどね・・・)
おばあちゃんが亡くなってしばらくして思い出のように見つめていると、お父さんが「カンカン石じゃないか」と石の名前を教えてくれた。
「カンカン石?」と聞き返す美琴。
「そうさ。この辺の山で採れる石で本当は『サヌカイト』って言うらしい。叩くといい音が出るだろう?」とお父さん。
「そんなにいい音?おばあちゃんが『いいもん見つけたね。ちょっと叩いてごらん』って笑いながら教えてくれたけど、全然音なんて鳴らなかったよ」と口をとがらせながら言う。
「握ったまま叩いても鳴らんだろう。父さんの知り合いに石屋さんがいるから穴を開けてもらえるか聞いてみるか?」とお父さん。
「穴?石に?」と思わず言う。
「あんまり小さいと穴を開けるのは難しいかもしれないが、穴を開けて紐で吊るしたら、たぶんいい音が鳴るんじゃないか」と考えながら答える。
せっかく思いついたんだからと石屋さんに連絡をして、次の休みの日にお父さんが連れて行ってくれた。
「ここだ、ここだ。たぶん居ると思うんだけどな・・・・。こんちはー」と建物の入口で大きな声で呼ぶお父さん。
(『田所石材』へぇ。こんなところに石屋さんってあったんだ。石屋さんて何するお仕事なんだろう?)
「はーい。今行きますー」と建物の奥から男の人が汗を拭きながら出てきた。
出てきたのは作業服の大柄な男の人。石屋さんだからとごつい人を想像したけど、優しそうな風貌のおじさんだった。




