第83話 カンカン石は必携
「やっぱり人気のスポットなんですね」と俺が言うと、
「けっこう地元の新聞でも見ますし、『綺麗な写真が撮れる』って有名だと思います。行ったことがある友だちに聞いて確かこの辺りに駐車場があるって言ってました」とウインカーを出す。
ここでも日ごろの行いの成果で、ちょうど出てくる車がいて停めることができた。
(今の車は夕焼けは撮らないんだ・・・・?)
車を降り、2人で海の方に歩いて行く。確かに引き潮で沖の方まで歩いて行っている人影が見える。
「ずいぶん沖まで行けるんですね」と俺が言うと、
「こんなに遠浅なんてすごいですよね」と美琴さん。2人でなるべく人がまばらな方に歩いて行く。
「お勧めは海水がちょっと溜まって川のような水たまりになっている所らしいですよ」とスマホで情報を見ながら声をかける。
「友達が『人がいっぱいいるところは人が歩いた波紋ができるから、あんまり人がいない所がいいよ』って言ってました。なので、あの辺りとかどうでしょうか」と絶景が撮れそうなスポットを探す。
あんまり遠くまで行くとどうしても足元が濡れてしまうが、サンダルやタオルもしっかり持って来たので、気にせずどんどん歩いて行く。
「この辺でどうでしょうか。あんまり遅くなると満ちてくる波で波紋が出来てしまうそうですから」と
美琴さん。
いい感じの水たまりの所で海を背景に立つ。スマホのカメラを地面すれすれに構えて「撮ってみますね」と俺。
夕焼けに染まり赤と紫のグラデーションになった空と鏡の様に空を映し出す海との境に美琴さんが立っている。逆光になるので顔は見えないが、とても幻想的で素敵な写真が撮れた。
「すごくいい感じですよ。見てください」と美琴さんに画面を見せる。
「ホントにすごい。綺麗ですね。健太さん撮るの上手です。私のスマホでも撮ってください」と美琴さんのスマホを渡される。
「同じように撮っていいですか?」と聞くと、
「ちょっと待ってください。せっかくなんでこれも一緒に」とカバンからちいさなカンカン石を出す。
「あんまり大きいと持つのが大変なので、小さめのにしました」と恥ずかしそうに言う。




