第77話 送っていきますよ
「俺も初めて見ました。東京にもいろんな祭りはありますが、ニュースでしか見たことが無くて・・。こんなに迫力があるなんて知らなかったです」
「そろそろ帰りましょうか」と話しながらも、あまりに人が多く思う様に進めない。
「美琴さんの家って近くですか?」と聞くと、
「近くと言えば近くですが・・・・」と返事が返ってきた。
「そんなに遅い時間ではないですが、人が多いですし送りますよ」と俺。
「え?いやぁ、近くですから」と遠慮がちに言う美琴さん。
「もし良かったらですけど、もう少し話がしたいなと思って・・・・。でも、あんまり遅くなるのもだめ・・・ですよね?送りがてら話でもどうかなと思って・・・」としどろもどろになりながら言う。
「健太さんが帰るのに遠くなっちゃいますけどいいんですか?」と聞かれ、
「俺は大丈夫です」と答える。
「じゃあ、家の近くまで行きますか?」と美琴さん。
「はい!」と返事をして笑う。
美琴さんの家は駅を少し東に歩いたところらしい。歩きなれない草履の為、2人ともゆっくりとした足取り。与島から見た海の話や石琴の音、水族館のイルカやサメの話、さっき見た太鼓台など今日一日の出来事だけでも盛沢山だった。
「この辺りで大丈夫です。その角を曲がった先ですから」と美琴さん。
楽しい時間の終わりとなり名残惜しいが、朝早くから活動してお互い疲れているのも分かっている為、
「じゃあ、また。おやすみなさい」と手を振って別れる。
美琴さんを送って少し遠回りになり、じいちゃん家に帰るのが少しだけ遅くなってしまった。
「ただいまぁー」と玄関に入り、「疲れたぁ」と座り込む。
風呂上がりらしきじいちゃんが「なんじゃ、もう帰って来たのか。せっかくの祭りなんやし、ゆっくりして来たらよかったのに」と肩にかけたタオルで顔を拭きながら言う。
「さすがに履き慣れない草履で足が痛いし」と答えると、
「ちゃんと送ってきたんか」とじいちゃん。




