第72話 父の葛藤
―――― 美琴side ――――
健太さんを送って直ぐにレッスンの時間となり、石琴を下ろす時間が無く夕飯後に降ろす。疲れた一日の最後に重い石を持ち上げるのがなかなかに堪え、もそもそと降ろしているとお父さんが来た。
「こんな時間に何やってるんだ?」と聞く父親に
「この間お父さんに枠を追加で作ってもらったでしょ。ちょっと外で鳴らしてみたくて車に乗せてたの」と答える。
「こんな時間にか?」
「帰ってくるのが遅くてそのままレッスンになっちゃったから」と簡単に答えると、
「ふーん・・・・」と訝し気な返事で見つめられた。
「一人でできるから大丈夫よ」と気まずい雰囲気になる前に言うと、
「一人じゃ重いだろ」と手伝ってくれた。
その後も何か言いたそうにチラチラこちらを見ていたが、最後の一つを運び終えるまで続きの話は無かった。
「ありがとう。お父さん」と言うと、
「いや、まぁ・・・」と歯切れが悪い感じで車庫から戻って行った。
車庫から戻った父親に「どうでした?」と聞くのは美琴の母。
「どうだった?て何がだ?」と仏頂面で答える父親。
「気になるんでしょ?」と言葉少なく問いかける母親。
「お前が聞くなって言うから・・・。風呂行ってくる」と不満げに言い残してリビングを出る。
(まぁね。私も気にならない訳じゃないんですよ。でも、今はそっとしておいた方がいい気がするんですよ)と2階に上がった美琴の様子を伺う様に視線を上げる。
その頃の美琴は健太から連絡が来て、時間調整のやり取りをしていた。
「18時開始らしいので、17:30くらいでしょうか」と美琴が聞くと
「私は大丈夫ですよ。屋台がいろいろ出てるようなので、何か食べながらでもいいですね」と健太。
「そうですね。屋台なんてゆっくり見て回るのは久しぶりです。楽しみにしてますね」と美琴。
坂出駅の南口で待ち合わせをすることにした。




