第69話 帰って来たなー
「これ、濃いのをかき氷にかけても美味しそうですね」と言う美琴さんに
「梅酒をかけても美味しいらしいですよ」と言うと、
「それはぜひやってみたいですね」と鼻を膨らませながら意気込む答えが返ってきたので、思わず笑ってしまった。
「ばあちゃんの梅酒もこんどおすそ分けしますね」と言うと、
「それは申し訳ないです。お店で売ってるのを買いますから大丈夫ですよ」と慌てて言う美琴さん。
「美味しいって飲んでもらったらばあちゃんも喜ぶと思うんですよね」と話しながら(来年はいっぱい作ってもらおう)と密かに決意した。
シソジュースで一息ついて「じゃあ帰りますか」と車を出す。
このパーキングエリアは上りと下り共通なので行き先を間違えないように坂出方面に向かう。ぐるっと坂を回って橋の上へ。太陽が高くなり窓越しの日差しが痛い。日差しに攻撃されながらも海を見る。ギラギラ照り付ける太陽をそのまま照り返す穏やかな海面。
「いい景色ですよね」とぼそりとつぶやく。
そんな俺の顔を横目でチラリと見て
「ほんと、綺麗ですよね。帰省する時、東京の人込みにもまれながら電車に乗って、最後にこの海と浮かぶ島を見ると『帰って来たなー』って思うんですよね。暗くなってると海が見られなくて残念・・・だったりして。そんな風に思ってる人は多いんじゃないですかね。
でも、ずーっとここに住んでると見慣れてしまって、有難さっていうかそういうのを忘れちゃってて・・・。健太さんとこうやって話をして、久しぶりに大学時代を思い出しました」と美琴さん。
与島から坂出北インターはあっという間の距離しかない。いろいろ話をしていると直ぐに出口となった。
「美琴さん。この後用事とかってあります?」と聞く。
「レッスンは夕方なので、特に急ぐ用事はないですけど・・・」と美琴さん。
「もし良かったらもう少し話が出来たらなって思って・・・」と言いだしたものの、遠慮がちな口調になる。
「あんまり遠くまでは行けないですが、いいですよ。どこ行きましょうか」と少し笑いながら答える美琴さん。
「どこがいいですかねぇ・・・。すみません、急に誘ってしまって・・・・」と申し訳なさそうに言うと
「私は大丈夫ですよ。健太さん香川の観光地ってどこか行きました?」と聞かれ考える。




