第68話 鍋島灯台
のんびりソフトクリームを食べ、せっかくだからとパーキングエリアの辺りを散策してみる。
「ちょっと歩きますが、『鍋島灯台』っていうのがあるみたいですよ」と俺。
「『足元注意』ってありますけど、大丈夫ですかね?」と美琴さん。
「15分ほど歩くみたいですね。往復だと30分かぁ。ちょっとこの季節に歩くには厳しいですかねぇ」とスマホで検索しながら言う。
「30分ですか・・・・」と美琴さんも悩んでいる様子。
「またにしましょうか。この暑さですから」と声をかけると、
「そうですね。季節がいい時にまた来たいですね。あっ、でも健太さんは夏休みが終わったら東京に帰っちゃうんですよね」と美琴さん。
「次は冬休みに来ますよ。絶対」(就職が決まってたら・・・・・)と答える。
「それはそれで、海風が寒そうですね」と震える自分を想像したのか笑いながら言う美琴さん。
「冬は空気が乾燥していて石琴の響きも変わりそうですね」と言うと、
「氷の様に冷たい石を吊るしていかないといけないですけどね。今があまりに暑いので、あまり想像できませんが、確かに冬の海に向かって鳴らしてみたいですね」と海の方を見つめる美琴さん。
その横顔があまりに素敵だったので見惚れてしまう。見つめているのに気づかれないうちに視線をそらす。
俺の視線に気づかなかったようで、不意に振り返り「ご一緒できるといいですね」と俺を見る。
(絶対帰って来ます!)と心の中で大声をあげつつ、「冬の楽しみが出来ました」と答えておく。
散策もそこそこに車に戻る。どこにいても蝉の鳴き声が響き渡り大合唱となっている。車内に入ると蝉の声が小さくなり、ホッとする。
「そうだ。忘れるところだった」とばあちゃんが持たせてくれたシソジュースを保冷バッグから出す。
「これ、ばあちゃんの手作りなんです。シソジュースなんですけど、よかったら」とぺっとボトルを渡す。
「家だと濃いのを炭酸とかで割るんですけど、ばあちゃんが『そのまま飲める方がいいだろう』って薄めに割ってくれたんです。苦手じゃなかったら・・・」と美琴さんを見る。
「手作りなんですか?すごいですね。おばあちゃん。暑い時に酸っぱいのが美味しそうです。遠慮なくいただきますね」と蓋を回して一口飲む美琴さん。
「思ったより、甘くてちょっと酸っぱくて美味しいです」と続けてゴクゴク飲む。




