第65話 パーキングエリア
「俺、電車では通ったことがあるんですが、車で瀬戸大橋を通るのは初めてです。ちょっと楽しみですね」
「電車だとつり橋のケーブルが見えなかったりするので、車で通ると『吊り橋だ』って思いますよ。与島はすぐそこなんで、あっという間ですけど」
料金所を通って『岡山方面』に向かう。始めは高速の壁が高かったが、しばらくすると海が見えた。
目が痛いほどの日差しの中で立ち上る入道雲。穏やかだけれどもギラギラ輝く海面。所々行き交う船。ポコポコと浮かんだように見える島々。涼しい車内だから感じるのかもしれないが、なんとも穏やかな時が流れていた。
海に見とれている俺を美琴さんは話しかけもせず、そっとしてくれていた。
しばらく見ていると「じゃあ降りますね」と美琴さん。
「こんなに近いんですね」と言うと、
「近すぎて寄ることがあんまりないんですよね・・・」と苦笑いで答える。
カーブを曲がるとパーキングエリアが見えてきた。
(これって帰りはどうなるんだろう・・)と考えていると、
「ここは上り下り共通なので折り返しができるんですよ。なので、帰りはここから坂出に帰れるんです」と俺の心の声が聞こえたかのようなタイミングで美琴さんが話す。
『えっ?』という顔で見ると、
「『どうするんだろう』って思ってるだろうな、って思っちゃいました」と笑顔が返ってきた。
正直に「その通りに思ってたんでびっくりしました」と俺も笑顔で返す。
パーキングエリアの中をぐるっと回って海に幾分近い隅の方に車を停める。
「朝早いし、思ったより空いてますね」と俺。
「さすがにここで石琴を出すのはやりすぎかなって思ってたんで、空いてて良かったです」と美琴さん。
二人で車を降りて後ろのハッチバックを開ける。タオルに包まれた石と、木枠が積まれていた。
「父に手伝ってもらうと『どこに行くんだ』ってきかれそうだったので、一人で頑張って運びました」と恥ずかしそうに言う美琴さん。
「重いのに大変でしたね」と言うと、
「私が『やってみたい』って言ったことですから」と恥ずかしそうだった顔からやる気満々、期待満々の顔に変わる。




