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第64話 与島

「おはようございます。今日はありがとうございます」と今日も笑顔の美琴さん。


「暑いですねぇ」と言ってもしょうがない事だがつい口から出てきてしまう。

汗だくの俺を見て、クーラーの風を強にしてくれた。


「すみません」と風の音に負けないように言うと「こちらこそ、暑い中付き合ってくださってありがとうございます。もう少し季節がいい時だと良かったのですが・・・」と美琴さん。


(それだと出会えていなかったかもしれない・・・・。俺は暑くても大丈夫です!)


「いえいえ、この夏に美琴さんと会えて俺は良かったです」とシートベルトを締めながら言う。

(しまった!つい勢いで言ってしまった!)

下を向いて『カチッ』と止めたまま、顔が上げられない。(どうしよう・・・)

自分の発言を気にしていないふりをして美琴さんの方をちらっと見る。


シートベルトを締める俺を見ながら目を丸くした美琴さんの顔が見えた。

(やばい・・・・)


美琴さんは目を丸くしたまま「私もそう思ってました」と答えた。


今度は俺が目を丸くして「え?」と思わず聞き返してしまった。


狭い車の中で、二人して見合ってしまった。


「「・・・・・・・・・」」


「ふふっ」「はははっ」と同時に笑い声が出る。お互いに照れくさくなり、


「じゃあ、いきましょうか」と言う美琴さんの声に

「はい」とだけ返事をする。


「『海を見ながらって』って言ってましたけど、どこか良いところがあるんですか?」と聞いてみる。

「前に何回か行ったことはあるんですけど、与島に行ってみようと思います」と美琴さん。

「与島ですか?」

「そうです。高速に乗らないと行けないんですがいいですか?」

「もちろんです。俺は行ったことが無いですね」

「瀬戸大橋って岩黒島とか櫃石島とか瀬戸内海の5つの島に橋が架かってるんですが、一般の車が立ち寄りできるのは与島だけなんですよ。海上高速道路では日本で初めて設置されたパーキングエリアだそうです。島なので駐車場からぐるっと海が見渡せて、今日みたいにすっきり晴れた日は海と空の境目がくっ付いたみたいに見えたりするんですよ。もちろん私の感想ですが」と笑いながら話す。


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