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第58話 ごはんですよー

口元にグラスを持ってくると、『ふわん』と梅の香りが漂い、香りだけで酔いそうなくらい鼻の奥まで入ってくる。

 氷をもうひと回しして、口をつける。


『トロッ』とした口触りでアルコールのとげが抜け、梅のふくよかな香りと味わいが広がる。

「美味しい!」と言いながらグラスを見つめ、その後にばあちゃんを見る。


「そうかい。そう言ってもらえると嬉しいねぇ。今年漬けたのと、去年漬けたのと、そのまた前に漬けたのと残っとるよ。まぁ、前に漬けたのは私がじいちゃんに内緒でちょっとずつ飲んで、もうこんだけしか残っとらんけどね」といたずらが見つかったみたいに笑うばあちゃん。

「そのまま飲んでももちろんおいしいけど、かき氷のシロップ代わりにかけても美味しいよ」とこれまた魅力的なお誘い。


「かき氷かぁ」と想像してその味を楽しんでいると、

「夕飯の後にやってみるかい?」とばあちゃん。


「うーん。すごく気になるけど、今日はいいや。ばあちゃんたちと抹茶のアイス食べたいし」と俺。


「そうだった、そうだった。梅酒はどこにも逃げんし、今日はアイスのお楽しみがあったねぇ」と言いながら梅酒のビンを床下に戻していく。

今年漬けたビンは満タン入っているので重そうだ。


「ばあちゃん。おれがやるよ。場所は決めてるの?」と聞くと、上から見て分かるように蓋に書いとるからどこに入れてもらってもかまわんさ」ということだったので、一番重たいビンを取りやすい手前に置いて、軽いビンを奥の方に置く。


「もうすぐ夕飯の支度を始めるから待ってておくれ。どれ、今日は・・・・」と冷蔵庫を開けてメニューを考えているばあちゃん。「アイスクリームを食べることを考えて、私ら年寄りはさっぱり軽いもんがいいかねぇ・・・」とつぶやくばあちゃんに「俺も、あっさりしたのがいいかな。今日も暑かったし」と声をかける。


「わかった、わかった。冷蔵庫と相談しながら作るから、何が出てくるかはお楽しみだよ」


ばあちゃんのご飯を楽しみにしながらゴロゴロしていると

(なんか俺、家にいる時はゴロゴロしかしてない気が・・・・)


「ごはんですよー」とどこかのTVCMのような声が飛んできた。

「わかったー」と大きな声で返事をして茶の間に向かう。


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