第56話 まぁ、ええけどな
「じゃあ、付き合ってくださったお礼におじい様と、おばあ様、健太さんの3人分買いますから、お土産にしてください」と美琴さん。
「え、いや、そんないいです」と断ったものの、「せっかくですから」と押し切られ、持ち帰り用の抹茶ソフトを受け取る。
「思ったより固いですね」と言うと、
「この時期ですから直ぐに溶けちゃいそうですけど、この上と下がコーンで挟まれてる感じがいいんですよ」と得意気な美琴さん。
「小学生の頃は一個食べるのは多いので友だちと半分こして、『どっちのコーンがいい?』って分けて食べてました」
「そうなんですね。3つも買ってもらってすみません。ばあちゃんも喜ぶと思います」とお礼を言いながら車に戻る。
アイスが解けては大変といつもの所まで送ってもらう。
「じゃあ、次はお祭りですかね」と約束を忘れないように声をかける。
「そうですね。お祭りの日は生徒さんたちも忙しくてレッスンはお休みなので空いてます。時間はまた相談しましょう」と美琴さん。
「はい!」と元気に返事をしてアイスの礼をもう一度伝え、車を出す美琴さんに手を振る。
『ふふふっ』思わず嬉しさが言葉にもれる。
蝉の声が鳴り響く中、暑さも忘れ笑顔でじいちゃん家に戻る。
「ただいまー」と玄関を入ると、ちょうどじいちゃんが廊下を歩いていた。
「おぉ、お帰り。なんや嬉しそうやの」と真顔からニヤニヤ顔になるじいちゃん。
「はい、これ、お土産」とソフトクリームの袋を渡す。
「おっ、あそこのアイスやないか。よぉ知っとったのぉ」と袋の中を見て嬉しそうに言う。
「教えてもらった」と答えると、
「誰にや?」とじいちゃん。
「別にいいじゃないか」とすっとぼけようとすると、
「まぁ、ええけどな」とそれ以上はつっこんでこなかった。




