第53話 昔懐かしい味
帰りの山道は平和で、山を下り切った時には2人でほっと息をついた。
「無事に降りてきたらお腹すいちゃいました」と笑いながら言う美琴さん。
11時を少し過ぎたくらいで昼食には少し早い気もするが、
「どこか食べに行きますか?」と聞く。
「車が停められるかどうか行ってみないと分からないんですが、久しぶりに行きたいお店があるんです。行ってみてもいいですか?」と遠慮がちに言う美琴さん。
「いいですよ。美琴さんが連れて行ってくれるお店はいつも美味しいので、楽しみですね」
「ありがとうございます。美味しいので、健太さんも気に入ってくれるといいのですが・・・」と坂出市内に向かう。
駅の近くの商店街にあるというので、お客さま駐車場に停める。
「高校生の時に友だちと時々行ってたんです。その近くに『たこ判』のお店もあって、先生の家で食べてたら、「娘のも買って来て」と頼まれることもあったんですよ」と笑いながら歩く。
「昔はこの商店街ももっとお店があったんですよ。夏休みには『土曜デー』っていう大きな縁日みたいなのがあって、子どもたちが待ってましたとばかりに遊んでました。くじ引きとかもいろいろあって、とっても楽しかったんですよ」など、美琴さんの話が続く。
話を聞きながら、商店街という名の道を歩く。人通りは少なく、ちらほらと閉まったシャッターにどこか昭和を感じる中を歩いて行くと、「ここです」と美琴さんが一軒のお店の前で止まる。
お店を見るとお茶屋さんのようだった。抹茶ソフトの立体看板も出ている。
店内に入ってお茶の香りを感じながら商品が並んだ棚の奥を通って行くと、テーブル席がいくつかあった。その一つに座る。美琴さんが言うには、明治創業の茶葉販売店が昭和中頃に開いた食堂だそうだ。名物の中華そばは、スープに昆布茶を使っているらしい。
テーブルのメニューを見る。
「中華そば」「冷麺」「焼飯」とお店の雰囲気に合った昔懐かしい感じの美味しそうなラインナップ。
「多幸八喜」というのがあり、「これって何ですか?」と美琴さんに聞く。
「それは、たこやき ですよ。初めて頼んだ時は想像してたのと違ってびっくりしましたけど」と思い出したように笑う。
「へぇ・・・」と再びメニューを見る。




