第52話 大丈夫やったか?
「あぁ、おはよう。朝早くからすまんな。昼からはちょっと祭りの準備があってなぁ。ちょっと持ってくるけん、待っとって」と田所さん。
「忙しい時にすみません」と美琴さん。作業場の前に停めてある軽トラには何やらたくさん積みこまれていた。
「これや、これ」と前に石を入れておいた箱を持ってきてくれた。
箱の中の石を手に取りながら、「こっちは穴が開いたやつな、こんな感じや。で、こっちは割れてしもうたけど何かいるんかなと思って取ってある」と説明してくれた。
箱の中を見ると、大きい石に穴が開いていたり、すごく小さな石に小さな穴が開いていたりと、前回よりラインナップが豊富だと美琴さん。
嬉しそうな美琴さんを見て思わず微笑む俺を見て、「そうや」と田所さん。
「美琴さん。お父さん何か言いよらんかった?儂、いらんでええこと言うてしもた思てな」とすまなさそうに言う田所さん。
「家のお父さんですか?え、いや、何も?何かあったんですか?」と不思議そうに聞く美琴さん。
「え、いやぁ、『石に穴が開いたで』思て、お父さんに連絡したんやけど、『男の人と2人やったで』って言うてしもて・・・・。何か言われんかった?」と気まずそうな田所さん。
「え?いや?どうでしょうか・・・・」と口ごもる美琴さん。
「何も無かったらえんや。いらんでええこと言うてしもた思て、気になっとたんや。そうか、何も無いならよかった」とホッとしたような表情。
「そういや、祭りは見に行くん?今年の太鼓台もいい感じやで」と話が変わる。
「太鼓台ですか?えぇ、観に行ってみようと思ってます」と俺を見る美琴さん。
「やっぱりすごいんですか?俺、観たことなくて」と思わず話に入っていく。
「あぁ、すごいで。あんなにいっぱい並んだ太鼓台を一度に見る機会はそうそう無いわ。人も多いけん、見に来るならはぐれんように気いつけや。なぁ、兄ちゃん」とバシバシ俺の背中を叩く。
「ゲホッ。はい」と答える俺に、「すまん、すまん」と田所さん。
今日の石も費用は要らないという事だったので、ありがたく受け取って失礼する。




