第5話 白峯
「あぁ、せっかく来たんだから霊場さんにお参りいこうかね」とばあちゃん。
「霊場さん?」これまた思いもよらない言葉に聞き返してしまう。
「そうそう、健太は行ったことがあるだろうかね。81番札所の白峯さんだよ。あんまり暗くなると山は危ないから夕焼けが見える頃に行こうかね。海が染まって綺麗にみえるはずさねぇ」とのんびり話すばあちゃん。
「夕焼けと海かぁ。それは見たいね。楽しみにしておくよ」とゴロリと転がりながら天井を見ながら答える。
昼はじいちゃん家でゆっくり(ゴロゴロとも言う)して夕方頃に出かける。
じいちゃんの車で出て少し行くと、新緑が眩しい山が見えてきた。
「しばらく前に道もきれいになって通りやすくなったのぉ」とじいちゃんが言いながらどんどん山道を登っていく。生い茂る木々が影を作り窓を開けると蝉の声が耳に痛いが、時折『サァッ』と窓越しに緑の風が入ってくる。
(木の匂いと土の匂い。ちょっと生温かいけど自然の風・・・か)
「着いたよ」とじいちゃんが白峯寺の駐車場に車を停め、降りる。
「やっぱり暑いねぇ。夕方より朝方に来たらよかった」とばあちゃん。
「朝はラジオ体操じゃから、夕方でえんじゃ。ほれ行くぞ」とじいちゃん。
石段を登って本堂へ。『シャワシャワシャワ・・・』と蝉の声がうねっている。
「これは紅葉?」と木陰を作っている木を見上げながら聞く。
「あぁ、秋になったらなかなかに綺麗やぞ。真っ赤な紅葉の向こうに青い空が広がっててのぉ」とにこやかに言うじいちゃん。
「へぇ・・・」と新緑の紅葉を見上げながら返事をする。
本堂でお参りをして、せっかく来たんだからとウロウロと散策をする。
(暑っついなぁ)と首の汗を腕で拭いながら歩いていると、蝉の声の中に何かが聴こえた気がした。
「? 何か鳴ってる?」と風で揺れる木の枝を見上げる。
『カーーーン・・・ キーーーーン・・・』
「どこだろう?」と周りを見た時により一層強い風が『ゴウッ』と吹き抜けていった。
舞い上がる葉っぱに思わず目を閉じる。




