第47話 役に立つ?
「おじいさんはね。『ここの平和は儂が守る』って言ってお巡りさんになって、『交番勤務がええ』って長い事交番でいたのよ。ねぇ、おじいさん」とじいちゃんを見て優しく微笑むばあちゃん。
「い、いや、なんや。そんなことも言いよったかの」と頬を掻きながら天井を見る。
顔が赤いのはお酒のせいだけじゃない気がする・・・・・。
「人の役に立つ仕事かぁ・・・・。やっぱりそういう方がいいのかな」とボソリとつぶやく。
「なんや、健太仕事で迷とんか」
「あぁ、ちょっと上手くいかなくて・・・」と正直に言う。
「それで、来て直ぐは元気なかったんか。久しぶりの儂たちに遠慮しとんかと思とったぞ」と、くいッと酒を飲み干しながらじいちゃん。
「お前、『人の役に立つ仕事』言うて何がある思とんや」と真剣な顔のじいちゃん。
「え?警察官とか消防官とか・・・・弁護士とか医者は今からじゃとても無理だけど・・・」と口ごもりながら答える。
「ほな、お前が今食べよるサラダは誰が作っとんや。豆腐にかけとる醤油は?農家さんが一生懸命作った美味しい野菜。豆腐はもちろん料理には欠かせん日本人の心の醤油も作ってくれる人がおるけん食べられる。24時間開いとる店があるけん、買い忘れても助かる。そういう仕事は人の役にたっとらんのか?」とじいちゃん。
「・・・・・・・・」
返す言葉が無かった。
「仕事っちゃ、やってみんと自分に合っとるんかどうかなんて分からん。『無理や』って思っても、ちょっと踏ん張ったらいけるかもしれん。でも、『やっぱりだめや』と思うかもしれん。何の役にも立たん仕事なんてない。自分で『これや』思うんをゆっくり探したらえぇ」と最後は目じりを下げながら俺の顔を見るじいちゃん。
(ありがとう・・・・・。俺、ここに来てよかったよ、じいちゃん)
「まぁまぁ、せっかくのご飯が冷めちゃいますよ。農家さんと漁師さんと、お醤油屋さんと、お店屋さんに感謝しながらいただきましょう」とばあちゃん。
「よぉけおって大変じゃ」とガハガハ笑うじいちゃん。ゆっくりとした時間が流れる食卓だった。




