第38話 ここにありそう?
自転車で去っていく少年の背中を見送っていると、「すまん、すまん。仕事の変更が急に入っちまってなぁ」と首にかけたタオルで額の汗を拭きながら田所さんが出てきた。
「こちらこそ忙しい時にすみません」とペコリとお辞儀をする美琴さん。
「おや、そっちは?」と俺の方を見て言う。
「初めまして、中山と言います。美琴さんの石に興味があって付いてきました」と背筋を伸ばして挨拶をする。
そんな俺をチラッと見て「ふうん」と言いながら汗をぬぐう田所さん。
(なんか、ちょっと気まずい・・・・)
「で、今日は何だい?サヌカイトの事って言ってたけど」と美琴さんに話を向ける。
「そうなんです。実はあの石で石琴ができないかなと思ってるんですが、どうしても音が合わなくて・・・。どこかであの石が手に入らないものかと相談に来ました」
「へぇ、木琴とか鉄琴は聞いたことがあるが、石で石琴ねぇ」と感心したように言う。
しばらく考えたような顔をして「ちょっとこっちおいで」と作業場の奥に誘われる。
「そっちの兄ちゃんも来るか?」と聞かれ、
「は、はい」と答え慌てて付いて行く。
作業場になっているらしい建物の脇を通って行くと山肌が見えている場所に出た。
「石屋も大きな音がするし、近所迷惑にならんように敷地が無駄に広くてなぁ。この辺も家の土地なんだが、どうだ、石がありそうじゃないか?」とゴツゴツした山肌を指さす田所さん。
「え?ここですか?・・・石・・・・」と思わぬ展開に目を丸くする美琴さん。
確かによく見ると美琴さんが持っているような石に見えないこともない。
近くに落ちていた木の枝で見えている石の周りをガリガリと掘ってみる。
(意外に大きいな・・・)
石の輪郭がはっきりしてきたら、両手でつかんでユサユサと揺すり、動いてきたら『ずぼっ』と引き抜く。
美琴さんに「どうかな?」と見せる。
「うーん。確かに持っている石に似てるかな。どうでしょうか田所さん?」と本職のおじさんに聞く。




