第37話 弓道着の少年
「そうなんですよ。曲がりくねった坂道をバックするのがちょっと怖くて・・・・」
「じゃあ、対向車が来ないようにお祈りしておきます」と手を合わせて前方を拝んでいると、
「ぷっ」と吹き出す美琴さん。
「え、俺は真面目にやってますよ」と少し憤慨したように言うと、
涙が出そうなくらい笑いながらも、しっかり前を見て「ありがとうございます」と答える美琴さん。
対向車に出会わないまま石屋さんに到着。
「はぁー」と車を降りて肩と腰を伸ばす美琴さん。
それをじっと見ていると、
「何ですか?『おばさんみたい』って思ってます?」と睨まれてしまった。
慌てて、「いやぁ、『おばあちゃんみたい』って思ってました」と本音を言ってしまった。
「あっ・・。いや、ちがっ・・・」と言い直そうとしたが、
「聞こえましたよ・・・・」と再び睨まれてしまった。
「すみません・・・」と頭を掻くと、
「冗談ですよー」と笑ってない目で言われてしまった。
(次からは気をつけよう・・・・)
「すみません。田所さんいらっしゃいますかー?先日お電話した山家ですー」と作業場の奥に向かって大きな声で美琴さんが言う。
そこにふらりと少年が現れた。
「誰?」と少年。よく見ると道着に袴姿。(そういえば弓道してるって言ってたかな)
「えっと、田所さんに石の事でお願いしたいことがありまして・・・。いらっしゃいますかね?」と恐る恐る聞いてみる。
「たぶん、いると思う」と答え奥に向かって、「親父――――!」と大きな声で呼ぶ。
しばらくして「何やーーーー!」とこれまた大きな声で返事が返ってきた。
「いるっぽい。ちょっと待ってりゃ来ると思う」と少年は作業場の入口に停めてあった自転車に乗って行ってしまった。(袴で自転車・・・・・。大丈夫なのか・・・・?)




