第28話 2軒目
「ここも人気なんですね」と言うと、
「今はしてないけど、昔はそこのネギ畑でお客さんがネギを採って、切ってうどんに乗せて食べてたんですって」
「え?そんなのいいんですか?」
「そうよね。そう思いますよね。今はもうできないみたいですが・・・で、ここのお勧めは『釜玉』ね」
「釜玉?」と聞きなれない単語に思わず聞き返す。
「そう、丼に卵を割って、先に溶いておくんです。そこに熱々の釜揚げの麺を入れてもらうんです。麺が熱いうちにかき混ぜると、卵が半熟になって麺と絡み合って美味しいですよ。出汁じゃなくて醤油をかけて食べるんですが、しょっぱくなるからかけすぎ注意で」と笑いながら教えてくれた。
まだまだ次があるという事で、ここでも1玉にしておく。
生卵を先に溶いて熱々の麺を入れてもらう。直ぐに混ぜていると卵の色が見る間に変わって半熟になる。少し醤油をたらして食べてみる。
「熱っつ!」と一口入れたものの、ハフハフしてしまう。目を白黒させている俺を見て、笑う美琴さん。
「ゆっくり食べて」と少しづつモグモグしている。
「1軒目と違ってもちっとしてるっていうか、ふわっとしてる感じで、半熟卵が美味しいです」と感想を言うと、
「これが釜揚げなんですよ。茹で立てのうどんでしか味わえないので、タイミングが合わないと、茹で上がるまでにしばらく待つこともあるんです。茹でて水で締めてこしが強いひきしまったうどんも美味しいですが、釜揚げは釜揚げで美味しいんですよね。夏に食べるにはちょっと熱いですけど」と食べ進めるごとに額に汗が浮いてくる。
もちもちのうどんをズズズッと無心で食べてしまった。どんぶりの底に残った半熟卵までしっかり完食して「ごちそうさまでした」と食器を返しに行く。
「はぁ」と車に乗って再びクーラーの恩恵を味わう。
「さすがに2件連続で行ったから、ちょっと休憩がてら道の駅に行きましょうか」と美琴さん。
「道の駅ですか?」と俺。
「えぇ、地元の野菜があったり、お土産物があったり、もちろんうどんもあるわよ」と意地悪そうに言う美琴さん。
「いや、ちょっとうどんは休憩でもいいです」と思わず言ってしまった。




