第17話 美琴 side9 出会い
「じゃあ・・・」とちょっと遠慮がちにバチを振り上げるあかりちゃん。
『コーーン・・・・・・・・』『キーーン・・・・・・』『カーーーン・・・・・・・』
室内とはまた違った音の広がりだった。
「うわぁ」
「いい音ね・・・」
と二人で音が広がっていく空を見上げる。
「先生。ありがとうございます」とあかりちゃんに言われ、我に返る。
「・・・こちらこそありがとう」とバチを受け取りながら「気をつけてねー」と帰りの挨拶をする。
(外だとこんな風に響くんだ・・・)と木枠に吊り下げられて揺れる石を見つめる。
ちょっと重い木枠を片手で支えながら、叩いてみる。
『コーーン・・・・・・・・』『キーーン・・・・・・』『カーーーン・・・・・・・』
「おばあちゃん。いい音鳴ったよ」
空に響く音がまるで見えるようにじいっと見上げながらつぶやいていた。
それからというもの、車で出かける時は車の後ろに石琴を乗せていろんな所で鳴らして見るというのが常になった。
今日は、久しぶりに瀬戸大橋記念公園の奥の方にある『マリンドーム』に来た。ここは瀬戸内海を背景にステージがあり、冬は寒風吹き荒れてとっても寒いが、今日は生ぬるい潮風が吹いていた。客席は半円の階段状になっていてステージを囲んでいる。ありがたいことにイベントが無い時は、自由に上がることができる。蒸し暑い夏の午後だが海を見ながら叩きたくなって来てしまった。
他に人がいないことを確認して、ステージに上がる。穏やかな海を見ながら片手で石琴を支えてバチで叩く。お父さんにお願いして持ちやすくしてもらったので、少し重いが安定は良くなった。
『コーーン・・』『キーーン・・』『カーーーン・・』
「やっぱり、湿気があると今一つね。ここだとちょっと反響があって響くけど」と一通り満足するまで鳴らして帰ろうかしらと、後ろを向くと客席に座ってる人と目が合ってしまった。
(うわぁ、人がいた。恥ずかしい)と慌ててステージから降りていると、その人も慌てたように「すみません」と声をかけてきた。
素通りするには申し訳ないと思い、
「私こそすみません。こんな時間に誰かいるなんて思ってなくて」とこちらも声をかける。
よく見ると私と同じくらいの男性だった。人がいたことと、話しかけられたことに目を丸くしていると、
「俺、中山健太って言います」と勢いよく名前を言われ、可笑しくなって笑いながら「私は山家美琴と言います。」と返事をしてしまった。
これが私と健太さんの出会いだった。
(美琴side終了)




