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賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


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賢者の血が目覚める日

次の日、ソラトはロックに会い、

自分がハーフエルフであること、魔法が使えたこと、

そして地下室で見つけた謎の箱のことをすべて打ち明けた。


ロックは腕を組み、ゆっくりとうなずく。


「そうか…。まあ、確かにソラトは昔から、どこかみんなと違った感じはあったよな。

頭が良いというか、回転が速いというか」


思いもよらない言葉に、ソラトは目を丸くした。


「ええっ、全然そんなことないよ。だって、字だってあんまり読めないし…」


ロックは苦笑し、肩をすくめる。


「お前は興味がないことには全然見向きもしないだけだ。

でも興味のあることは、いつもあっという間に覚えてしまうんだよ。

お前さ、やる気出たときだけ異常に強いんだよな」


そして、ふと思い出したように続けた。


「狩りでもそうだろ。

俺と二人で獲物を追い込むとき、効率よく動くための指示はいつもお前が出してた。

お前の言う通りにすれば、間違いがなかったじゃないか」


ソラトは、ロックがそんなふうに自分を見ていたことに驚き、胸の奥が少し熱くなる。


ロックは感心したように息をついた。


「五百年ぶりのハーフエルフの賢者、か…。

なるほど、そう聞くといろいろ腑に落ちるな」


そして興味津々といった顔で身を乗り出す。


「それでさっき、魔法が使えるようになったって言ってたよな。

ちょっと見せてくれよ」


ソラトは思わず微笑み、どこか誇らしげにうなずいた。


「うん、いいよ。見てて」


手のひらを上に向けた瞬間、小さな火の玉がふっと現れる。


「おお…! まじかよ。俺、魔法って初めて見たぜ」


「これ、火の魔法でさ…飛ばすこともできるんだよ」


続けて、水、風、氷の魔法を次々と見せると、

ロックは目を輝かせ、まるで子どものように感嘆の声を漏らした。


「すげえな…。話には聞いてたけど、魔法って本当にあるんだな」


ソラトはふと思い出したように言う。


「父さんの話だと、グランツの街にはハーフエルフがたくさんいて魔法学校もあるんだって、それに魔法も日常みたい。

リベッタ村みたいな辺境には魔法使いはめったに来ないし、ここで生まれたハーフエルフも、すぐ街に行っちゃうらしいよ」


ロックは少しだけ表情を曇らせ、慎重に言葉を選ぶ。


「…で、もしかしてソラト。

お前も、街に行くのか」


ロックは照れくさそうに笑う。


「そりゃそうだよな。魔法が使えるって分かったんだし、学校に行ってもっと勉強したくなるよな」


ソラトは首を横に振った。


「ロック、そうじゃないんだ。

魔法学校って、基礎を教えるだけなんだって。僕が行っても意味はないらしいよ。

……でも、いろんな魔導書があるって話は気になるけどね」


ロックは眉をひそめる。


「じゃあ、他に何かあるのか?」


ソラトは一瞬ためらった。

あの欠片のことを話して、またロックが“あの時”みたいにならないか──それが怖かった。


小さく息をつき、意を決して口を開く。


「この前ロックに見せた欠片、覚えてるでしょ?」


「ああ。あの金属みたいな、変にきれいな輝きのやつだろ」


ロックが普通に答えたので、ソラトは少し安心した。


「実はあれ、地下室で見つけたんだ。

でね……あの欠片が入ってた箱に紙があって。

そこに“勇者”と“グランツ”って文字が書いてあったんだ」


そしてソラトは、まえに祖父と父が話していた

“賢者の血筋”の言い伝えを語った。


ロックは腕を組み、ゆっくりとうなずく。


「なるほどな。そういうことか。

それは確かに気になるし……なんか運命みたいなのも感じるよな」


「そうなんだよ」


ロックは少し真剣な顔になる。


「でもさ、お前んちの伝承だと、ハーフエルフの誕生って“災厄”か“変革”の予兆なんだろ?

変革ならいいけど、もし災厄だったらどうするんだよ。

魔王とか出てきたら……相当ヤバくないか」


ソラトは一瞬だけ考え、そしてふっと笑った。


「でもさ。もしそれが僕の運命なら──」


にっこりと、まるで太陽みたいに明るく笑う。


「魔王に負けるなんて、絶対にないよ」


ロックはその言葉に一瞬驚き、すぐに笑顔を見せた。


「そりゃそうだよな。伝説の英雄賢者の子孫だもんな、お前は」


そしてふと思い出したように尋ねる。


「ところでさ、そのグランツの街までって……どのくらいかかるんだ?」


ソラトはあっけらかんと答えた。


「歩いて一か月ぐらいだって」


ロックは目をむく。


「遠っ」


二人は顔を見合わせ、思わず笑った。

その笑いの奥で、ソラトの胸には静かに決意が灯っていた。


――グランツへ行こう。

すべての答えを確かめるために。


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