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賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


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水剣が裂く炎

炎のウルフに激しく剣を打ち込む三人。


エリシアは舞うように剣を振るい、

ミリィは二刀流で乱れ切りを叩き込み、

アレクは連続技で確実にダメージを積み重ねていく。


炎のウルフの防護障壁は確実に消耗し、

魔力の流れが追いつかなくなってきていた。


(……あと少し)


そう思った瞬間――

炎のウルフは地を蹴り、素早くその場から離脱した。


巨体とは思えない速度で移動し、

三人の正面に回り込むと――


大きく口を開け、火球を吐き出した。


三人は素早く散開し、火球を回避する。

すぐに反撃へ移るが、炎のウルフも攻撃を避けながら

次々と火球を飛ばし、連続ダメージを回避してくる。


アレクが側面に回り込み、一撃を加えようとしたその時――


炎のウルフは素早く体をひねり、

アレクへ前足の爪を叩き込んだ。


「くっ――!」


アレクは剣で受け止めるが、

衝撃で吹き飛ばされる。


その直後、

背後にいたエリシアへ後ろ足の蹴りが飛ぶ。


エリシアは後方へ飛ばされるが、

空中で受け身を取り、無事に着地した。


その一連の動きを見ていたソラトは――

違和感を覚えた。


(……今の……)


ソラトは気づく。


(もしかして……)


違和感の正体を確かめるため、杖を構えた。


杖の先に光の玉が生まれる。


(光閃の魔術は威力が弱い……でも、速い)


炎のウルフが再び口を開き、

火球を放とうとしたその瞬間――


ソラトは魔術を放った。


閃光が一直線に炎のウルフの口へ走る。


バシュッ!


鋭い音を立てて命中した。


防護障壁ではなく――

本体に当たっている。


威力は弱いのでダメージはない。

だが、確実に本体へ届いた。


ソラトは確信した。


(……攻撃する瞬間、

 その部分の防護障壁は解除されている……!)


ソラトは炎のウルフの動きを見つめながら考える。


(防護障壁があるなら、自分も攻撃できない……

 だから攻撃する瞬間だけ、部分的に解除している……?)


確信したソラトは、すぐに皆へ声を上げた。


「そいつ、攻撃するときはその部分の障壁が解除されてるみたいですよ!

 だから――攻撃してきた時がねらい目です!」


アレクは、先ほど自分の剣に爪が当たった感触を思い出す。


(……なるほど、そういうことか)


エリシアは短く言った。


「合撃(ごうげき)が有効というわけか」


ミリィも理解する。


「攻撃してくるとこ、切ればいいんだね!」


三人は炎のウルフを囲み、反撃の瞬間を待つ。


炎のウルフが前足を上げ――

鋭い爪をアレクへ振り下ろした。


「いまだっ!」


アレクの剣が素早く、正確に前足へ振り下ろされる。


ザシュッ!


防護障壁が解除されている前足の先が切り落とされ、

塵となって消えた。


(よしっ、いける――!)


全員がそう思った、その直後。


切り落とされた前足が、瞬時に再生した。


「……っ!」


今度はエリシアへ向けて爪が振り下ろされる。


エリシアは水魔法の剣で即座に反撃し、

足先を切り落とす。


だが――

やはりすぐに再生する。


エリシアは後退しながら考えた。


(……致命傷になる部分を切り落とさないとダメだ。

 しかし、首や胴で攻撃してくることはない……

 やはり、防護障壁そのものを潰さないと……)



炎のウルフは前足を振り上げ、

エリシア・ミリィ・アレクの三人へ連続で攻撃を仕掛けてくる。


三人はそのたびに合撃で応戦し、

前足を切り落とすことには成功する。


だが――


切り落とした部分は、すぐに再生する。


炎のウルフは、まるで三人をからかうように、

わざと攻撃を繰り返しては再生を見せつけてくる。


(まずいな……このままではこちらが先に消耗してしまう)

エリシアは歯を食いしばった。


後方ではソラトも必死に打開策を探している。


レオナードはただ呆然と見ていた。

エリシアとアレクの剣技の凄さ。

そしてそれ以上に、ソラトとミリィの“常人ではない”能力。


(……この人たち、いったい……)


理解が追いつかない。



三人が炎のウルフの前に固まった、その瞬間――


炎のウルフが大きく口を開け、

火球を放とうとした。


その瞬間。


ミリィが跳んだ。


常人離れした跳躍。

まるで重力を無視したかのように、一直線に炎のウルフの口へ飛び込む。


炎のウルフの口の奥で、

火球が生まれかけていた。


ミリィは両手の水魔法の剣を交差させ――


火球を両断。


そのまま勢いを殺さず、

炎のウルフの口に飛び込み、

上顎から上を一気に切り離した。


巨大な炎の頭部が宙を舞い、

ミリィはそのまま後方へ抜けて着地する。


炎が悲鳴のように散り、空気が一瞬だけ震えた。


炎のウルフの巨体はぐらりと揺れ――

崩れ落ちる。


切断面から炎が散り、

やがて塵となって消えていく。


静寂。


そして――


ポトリ。


地面に、小さな欠片が落ちた。


不思議な光沢の金属片、

英雄剣士セリオス・グランブレードの遺産


それは、ただの金属ではない“存在感”を放っていた。



ミリィは剣をくるりと回し、

満足げに言った。


「ミリィの優勝だね!」


エリシアは心でつぶやく。


(……優勝とは何だ)

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