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賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


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領主からの招待

図書館での調査を終え、

エリシアたち四人は一度宿舎へ戻ることにした。


宿舎の廊下を歩きながら、アレクが言う。


「まずは船ですね」


エリシアは頷く。


「そういうことだな。

 島に行かないことには何も始まらん。

 本来なら行政院で用意してもらえばいいんだが……

 あの領主に知れるのは避けたいし」


「そうですよね」


四人はそれぞれの部屋の前に着いた。


エリシアは肩を回しながら言う。


「では、もう少ししたら夕飯を食べに行こう。

 肉料理のおいしい店を行政院の職員から聞いているから、

 そこにでも行ってみるか」


ソラトとミリィは同時に笑顔になる。


「肉……!」


「にくにくっ!」


エリシアとミリィは部屋に入り、

ソラトとアレクは隣の部屋へ入った。



――エリシアの部屋

エリシアは鞄を開け、

ミリィに上着を手渡す。


「ミリィ、夜は少し冷えそうだから、

 これを羽織っておいた方がいい」


「うん!」


その時――

ドアがノックされた。


コンコン。


エリシアはアレクだと思い、声をかける。


「なんだ、アレクか。開いてるぞ」


しかし、返ってきたのは聞き覚えのない声だった。


「お忙しいところすみません。

 私は騎士団長のレオナード・ラディという者です」


(……騎士団長? 何の用だ)


エリシアは警戒しつつドアを開けた。


そこに立っていたのは――

騎士団長の名に似つかわしくないほど腹の出た男だった。


汗をかきながら、にこにこと笑っている。

 その笑顔は妙に愛想が良すぎて、逆に不自然だった。


「エリシア・フェルノート騎士団長ですよね」






レオナードが帰ったあと、

エリシアはすぐ隣の部屋へ向かった。


アレクとソラトが顔を上げる。


エリシアは簡潔に事情を説明した。


「……とまあ、私たちがマッカリナから来たので、

 領主自ら“もてなしてくれる”そうだ」


アレクは眉をひそめる。


「あのケチな領主が……怪しい話ですね。

 何か企んでいますよ」


エリシアは静かに頷く。


「だろうな。

 何を企んでいるのかは分からんが、

 下手に断って機嫌を損ねるのも都合が悪い」


アレクは腕を組み、考え込む。


「……そうですね」


エリシアは続ける。


「なので招待に応じようと思うのだが……」


エリシアはソラトとミリィに視線を向けた。


「ソラトはアレクを“おじさん”、

 ミリィは“パパ”と呼ぶのだぞ」


ソラトは元気よく頷く。


「おじさんですね!」


ミリィは満面の笑みで叫ぶ。


「アレクパパ!」


エリシアは即座に訂正する。


「アレクはつけなくていい」


「パパ!」


ミリィは満面の笑みで言い直した。



アレクはそのやり取りを見て、ふと気づいたように言う。


「でも、その騎士団長の名前……レオナード・ラディってことは……」


エリシアは短く答えた。


「そうだ。領主の名はガルマンド・ラディ、おそらく身内だろうな。

しかも騎士団長には似つかわしくない体型をしていたぞ」


アレクは苦い顔をする。


「領主の権力で団長の肩書を与えた、ということですか」


「他人を信用できない性格なんだろうな。身内を騎士団長にするなんてのは」


アレクはその言葉に納得したように思う。


(騎士団が反勢力にならないように……か)


エリシアは軽く伸びをし、三人に向き直った。


「では、そろそろ行こうか」


四人はこれから向かう“領主のもてなし”が、

どんな意図を孕んでいるのかを胸に抱えながら、部屋を後にした。

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