↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/80

蠢く壁、赤い核

洞窟の突き当たり

通路の先は急に広い空間になっていた。


そこで――

ボウマナ騎士団の二人がスラッグラッドと戦っていた。


さらに、後方には負傷した団員が二人。

そのうち一人は魔法使いの団員にヒールで治療を受けている。


アレクは状況を見るなり、

もう一人の負傷者のもとへ駆け寄った。


「ヒール!」


淡い光がアレクの手から広がり、

負傷者の傷が徐々塞がっていく。


エリシアは驚いたように振り返る。


「アレク……お前、回復魔術が使えるのか」


アレクは照れたように答える。


「はい。得意ではありませんが……それなりには」


「では負傷者は頼んだぞ」


「はい!」



エリシアは襲いかかるスラッグラッドを斬り捨てながら、

戦っている二人の騎士へ駆け寄る。


「大丈夫か!」


口髭を生やした、品のある中年の騎士が

スラッグラッドを受け流しながら振り向いた。


「おお……王都の団長殿!」


その声には、

驚きと、安堵と、そして救われたような響きがあった。


エリシアはスラッグラッドを斬り伏せながら言う。


「状況を聞きたいが……とりあえず片付けてからだな」


その言葉を合図にしたかのように、

ミリィが飛び込んでいった。


「ミリィにまかせろっ!」


桃光色の剣が閃き、

次々とスラッグラッドが塵となって消えていく。


ソラトはアレクのもとへ駆け寄り、

負傷者の治療に加わった。


「ヒール!」


アレクの光とソラトの光が重なり、

負傷者の傷がみるみる塞がっていく。


回復魔法は本来時間がかかるものだが、

二人で行えばその速度は倍以上だ。


治療を終えると、

二人はもう一人の負傷者のもとへ向かい、

今度は三人で回復魔法を施した。


魔法使いの団員は深く頭を下げる。


「ありがとうございます……!」



ミリィがほとんどのスラッグラッドを片付け、

ようやく場が落ち着いた。


エリシアは剣を収め、

戦っていた中年の騎士――グラディスに声をかける。


「グラディス団長、これはいったい……」


グラディスは驚いたように目を見開いた。


「名前を覚えてくれましたか、エリシア騎士団長」


エリシアは肩をすくめる。


「まあ、式典で何度か会っているからな。それより、これは?」


グラディスは険しい表情で答えた。


「私たちが来た時には、

 ここにスラッグラッドの群れがいて討伐していたのですが……

 倒しても倒しても数が一向に減らず……

 今に至るわけでして」


エリシアは周囲を見渡し、

洞窟の壁や床に異常がないか探る。



その時――


「うわっ、なんだこれっ!」


ミリィの声が響いた。


エリシアとグラディスは同時に駆け寄る。


「どうした!」


ミリィが指さす壁面を見ると――


もこ……もこ……と、岩とは思えない湿った音を立てて動いていた


岩の表面が盛り上がり、

形を変え、

ぐにゃりと歪み――


スラッグラッドの形になっていく。


エリシアは息を呑んだ。


「……壁が、魔物に……?」


グラディスも青ざめる。


「こんな現象……見たことがない……!」



飛び出した壁面は、形を変えながら――

完全なスラッグラッドの姿になると、

壁から“剥がれるように”分離して動き出そうとした。


その瞬間。


「はいっ!」


ミリィの桃光色の剣が閃(ひらめ)き、

スラッグラッドの首があっさり落ちた。


塵となって消える魔物を見届けると、

ミリィはすぐに別の壁へ走り出す。


その壁面も、もこもこと蠢いていた。


「ソラト、これ見てっ!」


負傷者の治癒を終えたソラトが駆け寄る。


「どうしたの?」


ミリィの横で壁を見るなり、

ソラトは思わず声を上げた。


「うわっ、なにこれ……こわっ」


壁から分離しようとしたスラッグラッドは、

ミリィの一撃でまたも即死。


その後も二人は洞窟内を走り回り、

動く壁面を見つけては――


スラッグラッドになった瞬間に退治していく。


「こいつらよわっ!」


「だね!」


ミリィとソラトは、

まるで遊びのような軽さで次々と倒していく。


その様子を少し離れた場所から見ていた

エリシアとグラディス。


グラディスは目を丸くしながらつぶやく。


「あの二人は……」


エリシアは短く答える。


「勇者と賢者だ」


グラディスは驚くというより、

“腑に落ちた”という表情になった。


「あの少女の……人間離れした動き。

 あれが勇者の戦いなのか。


ということは、あの賢者の少年も相当……」


エリシアは静かに頷く。


「ああ。規格外の魔法使いだ」



アレクと、治癒を終えた兵士、そして魔法使いの団員が

エリシアのもとへ集まってきた。


三人は深く頭を下げる。


「助かりました、エリシア騎士団長」


「ありがとうございます!」


エリシアは軽く頷き、周囲を見渡す。


「それで……この洞窟はいったい何なのだろうか」


グラディスは険しい表情で壁を見つめた。


「もしかして魔物は……こういうふうに発生しているのでは……」


その時、ソラトが駆け寄ってくる。


「それにしても、ここは異常なくらい魔力を感じますね」


アレクも頷く。


「そうですよね。洞窟全体に魔力が充満しているような……」


ボウマナ騎士団の魔法使いも顔をしかめる。


「こんな感じは……私も初めてです」


エリシアは腕を組み、低くつぶやく。


「そうか。魔力は私には分からんが……

 このままにしておくわけにはいかないな」


グラディスが提案する。


「手分けして調べましょうか」


「そうだな」


エリシアの合図で、全員が洞窟内部の調査に散っていく。


ミリィはというと――

壁の動きを見つけては、

スラッグラッドが形を成す“その瞬間”に斬り捨てていた。



ソラトは壁からスラッグラッドが生まれる以外に

何か異常がないか、洞窟の広い空間を歩き回って調べていた。


足元には赤い魔石が散乱している。

ソラトはそれを足で払いながら、

地面に変わったところがないか丁寧に見ていく。


エリシアたちも同じように、

ドーム状の広い洞窟をくまなく調べていた。


しかし――

地面には特に異常は見つからない。


ソラトは下ばかり見ていたせいで首が疲れ、

ふと上を見上げた。


その瞬間。


「こっ、これは……!」


ソラトの声に、

全員が一斉にソラトの視線の先を追った。


そして――

全員が息を呑む。


エリシアが低くつぶやく。


「……あれは……魔石なのか……」


ドーム状の天井の中心に、

巨大な赤い魔石が、洞窟全体を薄く照らすように鈍く光っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。