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賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


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闇の奥に灯る桃光

ボウマナ騎士団の馬車に揺られ、

四人は農村へとやってきた。


村の要所には団員たちが配置され、

魔物の出現に備えて警戒態勢を敷いている。


案内役の団員に導かれ、

四人は山手の洞窟へ向かった。



洞窟の入り口は、人の背丈より少し高い程度。

その周囲には十名ほどの団員が待機していた。


案内してきた団員が声をかける。


「団長はどこに行った?」


団員の一人が答える。


「団長は団員四名を連れて、中の調査に行きました」


エリシアと案内役の団員は、

同時に顔を見合わせる。


エリシアが問いかける。


「入ったのはいつのことだ?」


「はい、一時間ほど前であります、エリシア団長!」


訓練場での指導のおかげで、

ほとんどの団員が四人の顔を知っていた。


エリシアは洞窟の暗がりを見つめ、

低くつぶやく。


「……けっこう時間がたっているな」


そして三人のほうへ向き直る。


「私たちも様子を見に行こう。

 何が起こるか分からないから、くれぐれも用心するように」


三人は同時に頷いた。


アレクは緊張で表情が引き締まっている。

ソラトとミリィは――

わくわくが隠しきれていない。


その対照的な三人の顔を見て、

エリシアの胸の不安は少し和らいだ。


エリシアは団員に告げる。


「では私たちも洞窟の様子を見に行くことにする」


「はい、お気をつけて!」


団員たちは、

訓練場で見たエリシアたちの実力を思い出し、

尊敬のまなざしで四人を見送った。


エリシアは剣の柄に軽く手を添え、

静かに言う。


「では行こうか」


「はい!」


ソラト、ミリィ、アレクの声が重なる。


四人は洞窟の暗闇へと足を踏み入れた。




洞窟はまっすぐに伸び、ゆるやかに下っている。

奥は完全な闇に沈んでいた。


少し進むと外の光は届かなくなり、

あたりは薄暗くなる。


ソラトは杖を軽く振り、

小さな光球を生み出した。


灯光の魔術


柔らかな光が洞窟内を照らし、

四人の影が岩壁に揺れる。


洞窟は分岐もなく一本道。

足元には、ところどころ赤い魔石が落ちていた。


エリシアが拾い上げて言う。


「ボウマナ騎士団長たちが倒した魔物のものだな。

……それにしても洞窟全体から嫌な気配を感じる」


アレクは周囲を警戒しながら頷く。


「そうですね、それに奥から魔力も感じます」


ソラトも光を前に向けながら言う。


「ですよね。奥に……なんか強い魔力ありますね」


エリシアは眉を寄せた。


「……ただの洞窟ではないな」


その時だった。


洞窟の奥から、

ズダダダッと地面を蹴る音が響き――


スラッグラッドが猛スピードで突っ込んできた。


エリシアが身構えようとした、その横を――


「ミリィがやるっ!」


ミリィが風のように飛び出した。


桃光色(とうこうしょく)の剣が一閃。

スラッグラッドは真っ二つに裂かれ、

赤い魔石を落として塵となって消えた。


ミリィは剣を見つめ、目を輝かせる。


「おお……この剣、すごくいい!」


刃はうっすらと桃色に光り、

洞窟の闇の中で幻想的に輝いていた。


エリシアは周囲を見渡しながら言う。


「……洞窟の変な気配のせいで、魔物の気配が分かりづらいな」


アレクも真剣な表情で頷く。


「ですね。自分もラッドの気配、まったく感じませんでした」


エリシアは剣の柄に手を添え、

静かに言った。


「目でしっかり見たほうがよさそうだ」



洞窟を進む四人。

一本道の通路はどこまでも続き、

時折スラッグラッドが飛び出してくるが――


「はいっ!」


ミリィがすべて一瞬で片づけてしまう。


そのたびに桃光色の剣が淡く光り、

洞窟の闇に美しい軌跡を描いた。


ソラトは壁面を指でなぞりながらつぶやく。


「……これ、自然にできた洞窟というより、

 誰かが掘った“トンネル”みたいですね」


壁はごつごつして自然の岩肌に見えるが、

高さも幅もずっと一定だ。


エリシアも違和感を覚えていた。


「たしかに……自然の洞窟にしては不自然だな」


その時――


前方にぼんやりと光が見えてきた。


アレクが目を細める。


「明かりが見えてきましたね。

 ボウマナ騎士団じゃないでしょうか」


エリシアは頷く。


「おそらくそうだ。行ってみよう」

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