四属性の魔導書と“試し”の時
父は棚の最下段から、他の魔導書よりも厚みのある四冊を取り出した。
表紙にはそれぞれ、燃えるような赤、深い青、淡い翠、そして白銀の紋章が刻まれている。
「それじゃ最後に攻撃魔法だ。
攻撃魔法には属性があって、ここにあるのは“火・水・風・氷”の四つだけだ」
ソラトは四冊を見つめた瞬間、今まで触れてきた魔導書とはどこか“温度”が違うと感じた。
掌に近づけただけで、微かな熱気や冷気が皮膚を撫でるような錯覚がある。
父は続けた。
「本当はもっと多くの属性があるらしい。
雷とか土とか、光とか闇とか……
でもな、どうもご先祖様は攻撃魔法より“防御魔法”の方に興味があったみたいなんだ」
父は苦笑しながら、壁にかかった古い家系図へ視線を向ける。
「この村を守ってる結界も、もとは防御魔法の応用らしい。
それが五百年経っても壊れずに残ってるんだから……
うちの先祖は本当に変わり者だったんだろうな」
ソラトは四冊の魔導書を見つめた。
火の魔導書は脈打つように赤く、
水の魔導書は静かに揺らぎ、
風の魔導書はページが微かに震え、
氷の魔導書は触れる前から冷気を放っている気がした。
ソラトは最初の一冊――赤い紋章の魔導書にそっと手をかざした。
指先が触れる前、五本の指の間からふっと炎が揺らめく。
まるで魔導書のほうがソラトを歓迎しているかのように。
次に青い紋章の水の魔導書へ。
手をかざした瞬間、空気が湿り、透明な水膜が指の間で震える。
風の魔導書では、
ページが自らめくれ、ソラトの手のひらを撫でるように風が走った。
氷の魔導書に手を伸ばすと、
触れる前から白い冷気が指先にまとわりつき、霜の粒が舞った。
四冊すべてを終えたソラトは、胸の奥に“何かが満ちた”ような表情で父を見上げる。
「父さん、試しにいこう」
その声は、これまでより少しだけ強く、確信に満ちていた。
「……おうよ」
父の返事には驚きと誇らしさと、
そしてほんの少しの“恐れ”が混じっていた。




