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賢者の末裔ソラトと八英雄の遺産  作者: じろりんたん


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努力の達人アレクと勇者ミリィ

四人が組合所へ戻ると、建物の前に事務員が立っていた。

その顔は驚きと安堵が入り混じった表情だった。


事務員は四人を見るなり、深く息を吸い込んだ。


「ここから討伐を拝見していました。

 みなさん……なんともお強い」


エリシアは軽く頷き、落ち着いた声で答える。


「魔物の姿はなくなりましたが、

 またいつ現れるか分かりません。

 漁師には注意を怠らないようにお伝えください」


事務員は真剣に頷く。


「わかりました……しかし、こんな小さな女の子があんなに強いなんて……

 確か、グランツの勇者様はまだ小さい女の子だと聞いたことがありますが……まさか……」


その言葉に、ミリィは胸を張って一歩前に出た。


「そう! 勇者ミリィだっ!」


そして勢いよくソラトを指さす。


「そしてこれが――賢者ソラトだっ!」


事務員は驚きつつも、どこか腑に落ちたように頷く。


ミリィはさらにアレクを指さした。


「そしてこれが――努力の達人アレクだっ!」


アレクは顔を赤くし、視線をそらす。


事務員は一瞬、完全に理解が追いつかない顔になった。


「努力の達人……?

 えっ……達人……?」


エリシアは苦笑しつつ、軽く会釈する。


「では、我々はこれで」


事務員は深く頭を下げた。


「本当に……ありがとうございました!」


四人は組合所を後にし、馬車留め場へ向かって歩き出す。

事務員はその背中が見えなくなるまで見送っていた。



馬車に到着すると、四人は乗り込み、

ソラトは両腕いっぱいに抱えていた赤い魔石を

手ごろな袋へザラザラと入れた。


エリシアはそれを見て言う。


「ここから先は、魔石で物が買える村が増える。

 討伐したら魔石は回収するほうがいいな」


ソラトは目を丸くする。


「えっ、そうなんですか?

 なんでお金じゃなくて魔石なんです?」


エリシアは前を向いたまま答える。


「小さな村は、お金より実用的な魔石のほうが価値を感じるんだろうな」


アレクは手綱を握り、軽く声を張る。


「では、出発します」


馬車がゆっくりと動き出し、

港の静けさが遠ざかっていく。




馬車は東へ向かう街道を、ゆっくりと進んでいた。


エリシアは地図を広げ、進行方向を確認した。


「……少し出発が遅れたので、暗くなる前に町に到着できないかもしれんな」


その言葉に、ソラトの目がぱっと輝く。


「と、ということは……野宿ですね」


エリシアは苦笑しながら頷く。


「ああ、野営になるかもしれんな」


ミリィも嬉しそうに身を乗り出した。


「狩りして、たき火で肉やっきやっき!」


エリシアは即座に否定する。


「野営食があるから、無理に狩りなんてする必要はないぞ」


ミリィはぷくっと頬を膨らませる。


「ミリィはたき火で肉やきやきがいいっ」


「まあ、それならそれで別に構わんが……

 町に到着できなかったときの話だぞ」


ソラトとミリィは顔を見合わせ、同時に嬉しそうに笑った。


「やったー、野宿!」


ミリィは御者台のアレクに向かって叫ぶ。


「町に到着しないように努力しろアレク!」


アレクは困った顔で振り返る。


「そ、そんな無茶な……!」




空が赤紫に染まり始めた頃、アレクは御者台で立ち上がり、前方を見渡した。


「団長殿、まだ町は見えません」


エリシアは地図を閉じ、静かに頷く。


「では仕方がない。手ごろなところで野営しよう」


その言葉が終わるより早く――


「やったーー!!」


ソラトとミリィが同時に叫んだ。

馬車の上で跳ねるほどの喜びようだ。


アレクは苦笑しながら手綱を引き、

野営に適した場所を探し始めた。


馬車は夕暮れの街道をゆっくり進む。

空は紫から群青へと変わり、

四人の影が長く伸びていく。

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