母の作ったアクセサリーの秘密
母は手に持っていた布袋をそっと差し出した。
「はいガルドさん。これが今回作ったアクセサリーですよ」
ガルドは袋を受け取り、中をのぞき込む。
木と皮で繊細に編まれたネックレス、ブレスレット、髪飾り。
どれも細工が細かく、触れれば体温が移りそうなほど温かみがあった。
「本当に繊細な細工ですな。街でも、ここまでの職人はなかなかいませんよ……おや、いつもより少し数が多いような」
母は微笑み、少しだけ誇らしげに言う。
「ソラトがグランツまでお世話になる分ですよ、ガルドさん」
ガルドは恐縮したように眉を下げた。
「おお、そこまでしていただかなくても。ソラトくんなら街までしっかり送り届けますよ。もちろん、村に戻る時も責任を持って」
母は満面の笑みを浮かべる。
「ありがとうございます、ガルドさん。料理まだまだありますから、いっぱい食べていってね」
そう言って台所へ戻っていった。
その背中を見送りながら、ガルドは父へ視線を向ける。
「本当に素晴らしい奥さんですな。料理はうまいし器量もいい。それに、こんな見事なものまで作れる」
ガルドは袋の上からアクセサリーをそっと撫でた。
父は少し照れたように肩をすくめる。
「ほんと、自分にはもったいないくらいの女性だと思いますよ。ソラトがハーフエルフで生まれてきたのも……彼女と関係してるのかもしれません」
その言葉に、ガルドはふと思い出したように声を上げた。
「そういえば、奥さんの作るアクセサリーは冒険者たちが買いに来るんですよ」
父は驚いて目を丸くする。
「冒険者が? それはまたどうして」
「いや、リベッタ村の織物で作った服は防御力が高いと評判だって前に言ったでしょう」
「ああ、確かに……なんか前に聞きましたね」
「それと同じように、奥さんのアクセサリーにもそれ以上の効果があるんだとか」
父は少し考え込む。
食卓の灯りが、彼の横顔に柔らかな影を落とした。
「でも、それはこの村の結界の影響も考えられなくもないし……」
さらに考え、ぽつりと続ける。
「でも彼女からは、不思議なものを感じるんですよ。妙な安心感というか……」
ガルドはにやりと笑った。
「そこに惚れて結婚したってわけですな」
父は顔を真っ赤にする。
「いやいや、そういう意味じゃなくてですよ。あっ、その……なんていうか……その……。が、ガルドさん、ミラッタ酒注ぎましょうか」
ガルドは笑いながらコップを差し出した。
「いやあ、酒が美味い夜ですな」
ミラッタ酒の薄赤い色が、灯りに照らされて揺れる。
その揺らぎは、家族の秘密と、村の静かな力をそっと映し出しているようだった。
早めに夕食を済ませたソラトは、部屋に戻って明日の準備をしていた。
いよいよ――グランツへ向かう日が来る。
村を出るのはこれが初めてだ。胸の奥がじわりと熱くなる。
グランツに行けば、地下室で見つけた“欠片”の秘密が解けるのだろうか。
父が語っていた魔石や魔道具、そして勇者の子孫の話――
考えれば考えるほど、ソラトの好奇心は膨らんでいくばかりだった。




