村の特産品
ガルドは、まるで旅の疲れを食事で洗い流すかのように、実に気持ちよさそうに食べる男だった。
ひと口ごとに目を細め、噛むたびに小さく頷く。
その様子を見るのが嬉しいのか、母は次々と皿を並べていく。
「いつ食べても奥さんの料理は格別ですな。いくらでも食べられそうですよ」
ガルドが心底からの声で言うと、母は照れたように笑った。
「今はお野菜が一番おいしい季節ですからね。それだけで料理がぐっと良くなるんですよ」
「いやいや、料理だけじゃない。いつも作ってもらっている木と皮のアクセサリー、あれも素晴らしい出来映えだ。奥さんは本当に器用な方ですよ」
褒められた母は、すっかり上機嫌になった。
ミラッタの実を切って盛りつけた皿を、嬉しそうにガルドの前へ置く。
「ガルドさん、はい。デザートはこれですよ」
「おお、ミラッタじゃないですか。これは街でも評判なんですよ。日持ちがすれば、もっとたくさん持って帰りたいんですがね」
父がフォークでミラッタを刺し、口に運ぶ。
「収穫して三日でダメになりますからね。村でもたくさん実るんですが、ほとんど食べきれませんよ」
「リベッタ村にしか実らない果実……じつにもったいない」
ガルドは本気で残念そうに眉を下げた。
父はそんなガルドの反応を待っていたかのように、薄赤い液体の入った瓶を食卓に置いた。
「それで、食べきれないミラッタで何かできないか考えて、これを作ってみたんですよ」
「おお、それはいったい?」
「酒です」
「ミラッタで酒が作れるんですか」
「はい。ぶどう酒と同じやり方で試したら、うまくいったんですよ」
父はミラッタ酒をコップに注ぎ、ガルドへ差し出す。
ガルドは慎重に受け取り、香りを確かめてから一口飲んだ。
「……おお、これは美味い。これはぜひ街に持って帰りたい品ですよ」
父は満足げに頷く。
「じゃあ余ったミラッタを仕込んで、来年は用意しておきましょう。ああ、それとこれが、この前村のみんなで作った交換品リストです」
父は紙をガルドに渡した。
「はい、わかりましたよ」
ガルドはリストを横に置くと、再び食事と酒に夢中になった。
「それにしても、この酒は食事によく合いますなあ」
その声には、旅人ではなく“家族の一員”のような安らぎが滲んでいた。




