第99話:未来への希望
フェリクスが三歳になった。
元気で、好奇心旺盛な子に成長していた。
「パパ、これなあに」
「これは、本だよ」
「ほん?」
「そう。字が書いてあって、読むものだよ」
「よむの?」
「うん。フェリクスも、大きくなったら読めるようになるよ」
「ほんとう?」
「本当だよ」
ルーカスは、息子に本を見せた。
フェリクスは、興味深そうに本を眺めていた。
まだ字は読めないが、絵を見て楽しんでいる。
「パパ、おはなし、よんで」
「いいよ」
ルーカスは、フェリクスを膝に乗せて、絵本を読み始めた。
* * *
セラも、子育てに励んでいた。
「フェリクス、ご飯を食べましょうね」
「やだー」
「やだじゃないでしょう。食べないと、大きくなれないわよ」
「……」
「パパみたいに、強くなりたいでしょう?」
「うん!」
「じゃあ、ご飯を食べなきゃね」
「わかった」
フェリクスが、渋々ご飯を食べ始めた。
セラは、優しい母親になっていた。
時には厳しく、時には優しく。
バランスの取れた教育をしていた。
* * *
「殿下、フェリクスは元気ですね」
「はい。元気すぎるくらいです」
「でも、それが一番です」
「そうですね」
二人は、息子を見守りながら微笑んだ。
「殿下、フェリクスは、どんな子に育つでしょうか」
「分かりません。でも、きっと素晴らしい子になると思います」
「殿下に似たら、優しい子になりますね」
「セラに似たら、強い子になります」
「両方に似たら、最高ですね」
「はい」
二人は、笑い合った。
* * *
ある日、フェリクスが聞いてきた。
「パパ、パパは、なにしてるの?」
「パパは、国を守っているんだよ」
「くにを、まもってる?」
「そう。みんなが安全に暮らせるように」
「すごーい」
「フェリクスも、大きくなったら、国を守れるよ」
「ぼくも?」
「うん。きっとできる」
フェリクスの目が、輝いた。
「ぼく、パパみたいになりたい!」
「本当?」
「うん! つよくて、やさしくて、みんなをまもれるひとに!」
「……」
ルーカスの目に、涙が浮かんだ。
「フェリクス、ありがとう」
「パパ、なんでないてるの?」
「嬉しくて、泣いているんだよ」
「うれしいの?」
「うん。とても嬉しいんだ」
ルーカスは、息子を抱きしめた。
* * *
夜、セラにそのことを話した。
「フェリクスが、僕みたいになりたいって」
「それは、嬉しいですね」
「はい。とても嬉しかったです」
「殿下、良い父親ですね」
「そうですか」
「はい。フェリクスは、殿下を尊敬しています」
「……」
「私も、殿下を尊敬しています」
「セラ……」
「これからも、良い家族でいましょう」
「はい。必ず」
二人は、手を繋いだ。
* * *
ルーカスは、未来について考えていた。
フェリクスが成長し、いつか大人になる。
どんな人間になるだろうか。
自分のような「禁忌」ではなく、普通の人間として。
自由に、幸せに生きてほしい。
「フェリクスには、僕が味わった苦しみを、味わわせたくない」
心の中で、そう思った。
だから、平和な世界を作る。
争いのない、優しい世界を。
それが、父親としての責任だと思った。
* * *
「殿下、何を考えていらっしゃいますか」
「フェリクスの未来のことです」
「未来……」
「この子には、幸せになってほしい」
「はい」
「そのために、僕は頑張ります」
「私も、一緒に頑張ります」
「ありがとう、セラ」
「私たち、家族ですから」
「はい。家族です」
二人は、微笑み合った。
未来への希望。
それは、フェリクスの笑顔の中にあった。
この笑顔を、守り続ける。
それが、ルーカスの使命だった。




