第95話:新しい命の誕生
妊娠が判明してから、約九ヶ月が経った。
セラのお腹は、大きくなっていた。
「殿下、そろそろだと思います」
「はい。いつ生まれてもおかしくないと、医師が言っていました」
「緊張しますね」
「僕も、緊張しています」
二人は、手を握り合った。
* * *
その夜、セラに陣痛が始まった。
「殿下……来たみたいです」
「セラ、大丈夫ですか」
「はい……痛いですが、大丈夫です」
「すぐに、医師を呼びます」
ルーカスは、急いで医師と産婆を呼んだ。
* * *
出産が始まった。
ルーカスは、セラの傍にいた。
「セラ、頑張って」
「はい……」
セラは、痛みに耐えながらも、懸命に頑張っていた。
「もう少しです、奥様。頑張ってください」
産婆が、励ました。
「セラ、僕がついています」
「殿下……」
ルーカスは、セラの手を握り続けた。
時間が、ゆっくりと過ぎていく。
セラの顔には、汗が浮かんでいた。
そして――。
* * *
「おぎゃあ!」
赤ちゃんの泣き声が、響いた。
「生まれました! 元気な男の子です!」
産婆が、赤ちゃんを抱き上げた。
「男の子……」
ルーカスの目から、涙がこぼれた。
「セラ、生まれました。僕たちの、子供が」
「殿下……見せてください」
産婆が、赤ちゃんをセラに渡した。
小さな、可愛らしい赤ちゃん。
黒髪に、青い目。
ルーカスとセラの、両方の特徴を受け継いでいた。
「可愛い……」
セラが、涙を流しながら微笑んだ。
「殿下、私たちの子供です」
「はい……」
ルーカスも、赤ちゃんを見つめた。
「僕たちの、子供……」
小さな手が、ルーカスの指を握った。
その温かさに、胸が熱くなった。
「ようこそ、この世界へ」
ルーカスは、そっと呟いた。
* * *
知らせは、すぐに王宮に届けられた。
「殿下にお子様が生まれた!」
「男の子だそうだ!」
「おめでとうございます!」
王宮中が、祝福の声に包まれた。
フリードリヒ国王も、すぐに駆けつけた。
「ルーカス、セラフィーナ嬢、おめでとう」
「父上、ありがとうございます」
「孫か……可愛いな」
フリードリヒが、赤ちゃんを見て目を細めた。
「名前は、決めたか」
「はい。考えていた名前があります」
「何という名前だ」
「フェリクス、と」
「フェリクス……」
「『幸福』という意味です」
ルーカスが、説明した。
「この子には、幸せな人生を送ってほしい」
「……良い名前だ」
フリードリヒが、微笑んだ。
「フェリクス・フォン・ヴェルスタイン。我が孫を、歓迎する」
「ありがとうございます、陛下」
セラが、深く頭を下げた。
* * *
アルベルトとヴィクトルも、祝福に来た。
「ルーカス、おめでとう」
「兄上方、ありがとうございます」
「甥っ子か。可愛いな」
「フェリクス、といいます」
「フェリクスか。良い名前だ」
「幸せになってほしいと思って」
「きっと、なれるさ。お前とセラフィーナ嬢の子なら」
「ありがとうございます」
兄弟たちの祝福が、温かかった。
* * *
その夜、ルーカスとセラは、赤ちゃんを囲んで過ごした。
「殿下、父親になりましたね」
「はい。実感が、湧いてきました」
「私も、母親になりました」
「セラ、お疲れ様でした」
「いいえ。幸せです」
セラが、微笑んだ。
「フェリクス、可愛いですね」
「はい。とても、可愛いです」
「殿下に、似ていますね」
「セラにも、似ています」
「二人の子供ですから」
「はい」
二人は、赤ちゃんを見つめた。
「フェリクス、君が生まれて、本当に嬉しいよ」
ルーカスが、そっと語りかけた。
「君には、幸せな人生を送ってほしい」
「……」
「パパとママが、守るからね」
赤ちゃんが、小さな手を動かした。
まるで、応えているように。
「セラ、頑張りましょう」
「はい。一緒に、この子を育てましょう」
「良い父親になります」
「私も、良い母親になります」
二人は、手を握り合った。
新しい命が、生まれた。
二人の愛の結晶。
これからは、三人で歩んでいく。
幸せな家族として。




