第90話:卒業式、新たな門出
卒業式の日がやってきた。
王立学院の講堂には、卒業生とその家族が集まっていた。
「殿下、いよいよですね」
セラが、少し緊張した表情で言った。
「はい。長かったような、短かったような……」
「五年間、あっという間でした」
「でも、充実していました」
「はい」
二人は、微笑み合った。
* * *
講堂の中には、多くの人がいた。
卒業生たち、教師たち、そして来賓。
国王フリードリヒ二世も、来賓として出席していた。
アルベルトとヴィクトルも、一緒だった。
「父上、兄上方……」
ルーカスは、家族の姿を見つけて、胸が熱くなった。
「殿下、ご家族が来ていらっしゃいますね」
「はい。嬉しいです」
「私の両親も、来ています」
「そうですか。みんなで、卒業を祝えますね」
「はい」
セラも、嬉しそうだった。
* * *
卒業式が始まった。
学院長が、壇上に立った。
「本日、ここに第46期生の卒業式を挙行いたします」
荘厳な雰囲気が、講堂を包んだ。
「卒業生の皆さん、おめでとうございます」
学院長の言葉に、拍手が起きた。
「皆さんは、五年間の学院生活で、多くのことを学びました」
「……」
「学問だけでなく、友情、愛、そして人として大切なことを」
「……」
「これからの人生で、学院で学んだことを生かしてください」
学院長の言葉は、心に響いた。
* * *
卒業証書の授与が始まった。
一人一人の名前が呼ばれ、卒業証書を受け取る。
「ルーカス・フォン・ヴェルスタイン」
ルーカスの名前が呼ばれた。
壇上に上がり、学院長から卒業証書を受け取る。
「殿下、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「殿下の学院生活は、波乱に満ちていました」
「……」
「しかし、殿下は全てを乗り越えました。立派です」
「学院長先生……」
「これからの人生も、頑張ってください」
「はい。ありがとうございます」
ルーカスは、深く頭を下げた。
* * *
「セラフィーナ・ヴェルディ」
セラの名前も呼ばれた。
彼女も壇上に上がり、卒業証書を受け取った。
「ヴェルディ殿、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「殿下を支え、守り続けた姿、見事でした」
「……」
「これからも、殿下を支えてあげてください」
「はい。必ず」
セラは、力強く頷いた。
* * *
クラウス、レオナルド、エリアス。
仲間たちも、次々と卒業証書を受け取った。
みんなの顔が、誇らしげだった。
「俺たち、卒業だな」
「ああ」
「長かったな」
「でも、楽しかった」
「これからも、仲間だぞ」
「もちろん」
仲間たちが、笑顔で語り合った。
* * *
卒業式が終わり、庭園に出た。
家族や友人たちが、卒業生を祝福していた。
「ルーカス、卒業おめでとう」
フリードリヒが、ルーカスに声をかけた。
「父上……ありがとうございます」
「立派に成長したな」
「父上のおかげです」
「いいや、お前自身の力だ」
フリードリヒが、微笑んだ。
「これからも、頑張れ」
「はい」
父子が、固く握手を交わした。
* * *
「ルーカス、おめでとう」
アルベルトとヴィクトルも、声をかけてきた。
「兄上方、ありがとうございます」
「立派になったな」
「入学したときは、小さかったのに」
「もう、大人だ」
「兄上方には、お世話になりました」
「何を言っている。家族じゃないか」
「……はい」
ルーカスの目に、涙が浮かんだ。
「泣くな、卒業式だぞ」
「すみません……」
「いいさ。嬉しい涙だろ」
「はい」
兄弟たちが、ルーカスの肩を叩いた。
* * *
セラの両親も、来ていた。
「セラフィーナ、卒業おめでとう」
「父上、母上……ありがとうございます」
「立派になったわね」
「殿下のおかげです」
「殿下も、あなたのおかげだと言っていましたよ」
「……」
「お互いを、支え合っているのね」
「はい」
セラが、微笑んだ。
「これからも、殿下をよろしくね」
「はい。必ず」
親子が、抱き合った。
* * *
卒業式の後、ルーカスとセラは二人で学院の中を歩いた。
「殿下、卒業しましたね」
「はい。実感がわきません」
「私も、です」
「ここで、色々なことがありました」
「はい」
「セラと出会ったのも、ここでした」
「……はい」
「一番の思い出です」
「殿下……」
「セラと出会えて、本当に良かったです」
「私も、です」
二人は、手を繋いで歩いた。
「殿下、これからどうしましょうか」
「まずは、結婚式ですね」
「結婚式……」
「正式に、夫婦になりましょう」
「はい」
セラの顔が、幸せに輝いた。
「殿下と結婚できるなんて、夢みたいです」
「夢ではないですよ。現実です」
「はい……」
「セラ、愛しています」
「私も、愛しています」
二人は、学院の門の前で、そっとキスを交わした。
新たな人生が、始まる。
二人で一緒に、歩んでいく。
その決意を胸に、学院を後にした。




