第88話:正式な婚約発表
和解から一ヶ月が経った。
ルーカスは、王宮に呼ばれた。
「父上、何かあったのですか」
「ルーカス、良い知らせがある」
フリードリヒが、微笑んだ。
「良い知らせ……」
「お前とセラフィーナ嬢の婚約を、正式に発表する」
「正式に……」
「そうだ。もう、隠す必要はない」
フリードリヒの言葉に、ルーカスは胸が高鳴った。
* * *
「婚約発表は、来週の王宮舞踏会で行う」
「舞踏会で……」
「国中の貴族が集まる場だ。そこで、お前たちの婚約を発表する」
「ありがとうございます、父上」
「セラフィーナ嬢にも、伝えておいてくれ」
「はい」
ルーカスは、嬉しさでいっぱいだった。
正式な婚約発表。
それは、セラとの未来が、公に認められることを意味していた。
* * *
学院に戻り、セラに伝えた。
「セラ、大切な話があります」
「何ですか、殿下」
「僕たちの婚約が、正式に発表されることになりました」
「え……」
「来週の王宮舞踏会で」
「舞踏会……」
セラの顔が、真っ赤になった。
「本当に……」
「はい。父上が、発表すると」
「殿下……」
セラの目から、涙がこぼれた。
「嬉しいです……」
「僕も、嬉しいです」
「殿下と、正式に婚約できるなんて……」
「セラ……」
二人は、抱き合った。
* * *
「でも、緊張しますね」
セラが、少し不安そうに言った。
「舞踏会で、みんなの前で……」
「大丈夫です。僕が傍にいます」
「殿下……」
「二人で、乗り越えましょう」
「はい」
セラが、微笑んだ。
「殿下、私、ドレスを持っていません」
「ドレス……」
「舞踏会に着ていくような、立派なドレスが」
「それなら、用意します」
「え……」
「僕の婚約者にふさわしいドレスを、準備しますね」
「殿下、でも……」
「遠慮しないでください。僕の気持ちです」
「……ありがとうございます」
セラが、嬉しそうに頷いた。
* * *
舞踏会の準備が始まった。
ルーカスは、王宮の仕立て屋にセラのドレスを注文した。
「最高のドレスを、お願いします」
「承知いたしました、殿下」
仕立て屋は、セラの採寸をした。
「ヴェルディ殿は、本当にお美しい方ですね」
「ありがとうございます」
「素敵なドレスを、お作りいたしますよ」
「よろしくお願いします」
セラは、少し恥ずかしそうに頭を下げた。
* * *
数日後、ドレスが完成した。
深い青色の、美しいドレスだった。
「セラ、着てみてください」
「はい……」
セラが、ドレスに着替えてきた。
ルーカスは、言葉を失った。
「セラ……」
「どう、ですか……」
「とても、綺麗です」
「本当ですか……」
「はい。世界で一番、綺麗です」
セラが、顔を真っ赤にした。
「殿下、大げさです」
「本当のことです」
「……」
「セラ、舞踏会が楽しみです」
「私も、です」
二人は、微笑み合った。
* * *
舞踏会の日がやってきた。
王宮の大広間には、国中から貴族たちが集まっていた。
ルーカスは、正装で会場に入った。
セラは、青いドレスを身に纏っていた。
「殿下、緊張しています」
「大丈夫です。僕も緊張しています」
「殿下も……」
「でも、セラと一緒なら、大丈夫です」
「殿下……」
二人は、手を繋いで会場に入った。
* * *
会場が、ざわめいた。
第三王子と、美しい女性が一緒に入ってきた。
「あれが、ヴェルディ殿か……」
「なんて美しい……」
「殿下と、お似合いですね」
称賛の声が、あちこちから聞こえた。
舞踏会が始まった。
音楽が流れ、貴族たちが踊り始めた。
「セラ、踊りましょうか」
「はい」
二人は、ダンスフロアに出た。
ワルツに合わせて、踊り始めた。
「殿下、上手ですね」
「セラも、上手です」
「練習しましたから」
「僕も、です」
二人は、微笑み合いながら踊った。
周囲の視線など、気にならなかった。
二人だけの世界に、いるようだった。
* * *
ダンスが終わり、国王が壇上に上がった。
「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」
フリードリヒの声が、会場に響いた。
「本日は、大切な発表があります」
会場が、静まり返った。
「第三王子ルーカス・フォン・ヴェルスタインと、セラフィーナ・ヴェルディ嬢の婚約を、正式に発表いたします」
会場が、どよめいた。
そして、大きな拍手が起きた。
「おめでとうございます!」
「素晴らしい!」
「お似合いのカップルです!」
祝福の声が、会場に満ちた。
「ルーカス、セラフィーナ嬢。壇上へ」
フリードリヒが、二人を呼んだ。
ルーカスとセラは、手を繋いで壇上に上がった。
「皆様の前で、改めて宣言いたします」
フリードリヒが、続けた。
「この二人の婚約を、王家として正式に認めます」
再び、大きな拍手が起きた。
* * *
「殿下、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「ヴェルディ殿、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
貴族たちが、次々と祝福に訪れた。
ルーカスとセラは、一人一人に丁寧に応対した。
「殿下、疲れましたね」
「少し。でも、嬉しい疲れです」
「私も、です」
「セラ、正式に婚約者になりましたね」
「はい……」
「これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
二人は、微笑み合った。
正式な婚約。
それは、二人の新しい出発点だった。
これからも、一緒に歩いていく。
その決意を、改めて胸に刻んだ。




