第87話:和解の後、新しい日常
教会との和解から、数日が経った。
ニュースは、国中に広まっていた。
『第三王子、「禁忌」認定撤回――教会と歴史的和解』
人々は、この知らせを喜んで受け入れた。
「殿下、おめでとうございます!」
「良かったですね!」
「これで、安心ですね!」
学院に戻ったルーカスを、多くの生徒たちが出迎えた。
* * *
「殿下、本当に良かったです」
セラが、涙ぐみながら言った。
「セラのおかげです」
「え……」
「セラが傍にいてくれたから、僕は頑張れました」
「殿下……」
「ありがとう、セラ」
ルーカスが、セラの手を握った。
「私こそ、ありがとうございます」
「これからも、よろしくお願いします」
「はい。ずっと、殿下の傍にいます」
二人は、微笑み合った。
* * *
学院での生活は、以前よりも穏やかになった。
監視の目がなくなり、自由に過ごせるようになった。
「殿下、今日の授業、楽しかったですね」
「はい。緊張せずに、受けられました」
「良かったです」
「セラも、リラックスしていましたね」
「はい。もう、殿下を守るために、常に警戒する必要がなくなりましたから」
「それは、少し寂しいような……」
「え?」
「冗談です」
二人は、笑い合った。
* * *
友人たちとの時間も、増えた。
「ルーカス、今度、街に遊びに行かないか」
クラウスが、声をかけてきた。
「いいですね。セラも一緒に」
「もちろん。みんなで行こう」
「レオナルド殿も、エリアス殿も誘いましょう」
「ああ、そうしよう」
仲間たちで、街に出かける計画を立てた。
以前は、暗殺の危険があって、気軽に外出できなかった。
しかし、今は違う。
自由に、出かけられる。
「普通の学院生活……」
ルーカスは、その言葉を噛みしめた。
ようやく、手に入れた日常だった。
* * *
週末、仲間たちと街に出かけた。
「ここのケーキ、美味しいですよ」
セラが、お気に入りの店を案内した。
「へえ、良さそうだな」
「私も、行ってみたいです」
みんなで、店に入った。
「いらっしゃいませ……あ、殿下!」
店主が、ルーカスを見て驚いた。
「お忍びで来ました。普通に接してください」
「は、はい……どうぞ、こちらへ」
店主は、緊張しながらも案内してくれた。
「殿下、有名人ですね」
「そうみたいですね」
「でも、みんな、好意的ですよ」
「ありがたいことです」
ルーカスは、微笑んだ。
* * *
ケーキを食べながら、みんなで話した。
「ルーカス、これからどうするんだ」
クラウスが、聞いてきた。
「これから……」
「卒業後のこととか」
「まだ、はっきりとは決めていません」
「そうか」
「でも、一つだけ決めていることがあります」
「何だ」
「セラと一緒にいること」
ルーカスの言葉に、セラが顔を赤くした。
「殿下……」
「それだけは、絶対です」
「私も、です」
二人は、お互いを見つめた。
「おいおい、ここでイチャイチャするなよ」
クラウスが、笑った。
「すみません」
「まあ、お似合いだから、いいけどな」
「ありがとうございます」
みんなが、笑った。
* * *
街を歩いていると、人々がルーカスに声をかけてきた。
「殿下、おめでとうございます!」
「殿下は、国の誇りです!」
「これからも、頑張ってください!」
温かい言葉が、次々と寄せられた。
「ありがとうございます」
ルーカスは、一人一人に丁寧に応えた。
「殿下、人気者ですね」
「そうみたいですね」
「当然ですよ。殿下は、国を救った英雄ですから」
「英雄なんて、大げさですよ」
「謙虚ですね」
セラが、微笑んだ。
* * *
夕暮れ時、学院に戻った。
「今日は、楽しかったです」
「はい。みんなと過ごせて、良かったです」
「また、行きましょうね」
「はい」
仲間たちと別れ、ルーカスとセラは二人で歩いた。
「殿下、幸せですか」
「はい。とても幸せです」
「私も、です」
「セラがいてくれるから」
「殿下……」
「これからも、一緒にいてくれますか」
「はい。ずっと」
二人は、手を繋いで歩いた。
夕焼けに染まった空が、美しかった。
新しい日常が、始まっていた。
穏やかで、幸せな日常。
ルーカスが、ずっと望んでいたもの。
それが、ようやく手に入った。
「僕は、人間になれた……」
小さく呟いた。
セラが、そっと手を握りしめた。
言葉はなくても、気持ちは伝わった。
二人は、微笑み合いながら、寮に向かった。




